突如襲った、胆管がんのステージⅢB
取材には、スタジオ店長、それに撮影のモデルをしてくれた現役風俗嬢の鞠子も同席。さながら、焼き肉宴会のスタートだ。と、その時急に「実は私……」と話し始めたのが、冒頭のがん告白だったのである。
「独立してノリノリで撮っていたんですが、ある時、鳩尾がすごく痛くなった。逃げられないような痛みって言うんですかね。そこで病院に行ったんです。そうしたら、胆管がんのステージⅢBって言われて」
ステージⅢBは、かなり重い部類に入る。ステージⅣになると手術ができず、放射線治療や胆道ドレナージによる胆汁回収を行わなければならない。日常生活に支障をきたす場合がある。手術できるギリギリの進行度合だったことが分かる。
がんだと分かったのは2022年12月。それから手術できる病院に転院し、翌23年2月に手術し、「肝臓の4分の3を摘出しました」と明かす。まるで、他人事のように淡々とした語り口だ。しかし、告知された時の心境を尋ねると、「がん? 私が? いやいや、何言っているのか分からない」と、動転した気持ちを正直に語った。
何より、仕事ができないことがショックだったと語るATARUを支えたのは、お得意さんとなった顧客の風俗嬢たちだった。
「皆、応援してくれて助けられました」
応援って? 毎日見舞いに来たのかと思いきや、そうではなかった。それまでATARUの横で静かに聞き役に徹していたスタジオ店長がこう説明してくれた。
「新型コロナ禍だったので、お見舞いに行けなかったんです。そこで、何かできないかと思って、スタジオで『ATARUくじ』を始めました。1回500円で、缶バッジなどのグッズが当たるもの。そのくじの全額をATARUさんに渡したんです」
金額は10万円以上にもなった。他にも個人でお見舞金をスタジオに預けてくれる人も多くいた。
「一生、頭が上がらない」
ATARUはそうぼそりと語った。手術後、安静に過ごす日々が続いた。その間、ツイッター(現・X)は見なかったと言う。
「元気に活躍している女性カメラマンを見るのがつらくて、悔しくて。だからYouTubeばかり見ていました」
負けん気の強さを垣間見せた。不安や焦燥感が伝わってくる。気を紛らわすために見てハマッたのは、怪談モノや都市伝説モノだったと言う。
それから約半年後、ATARUは現場復帰を果たす。それから仕事への取り組み方が変わったと語る。
「以前は、女性(風俗嬢)に対して、自分の意見を言えなかったんです。『本当はこうしたほうがこの子には合っているのに』と思っても、その子が『こういう感じにしたい』って言うと、そのとおりにしていた。それがものすごくストレスになっていたんですね。
もちろん、相手との信頼関係を築いてからですが、『あなたにはこのポーズのほうが合っていると思う』『こんな表情をしてみない?』って自分の考えを伝えられるようになりました」
それまでの写真の腕に加え、元風俗嬢としてのインスピレーションや店に通う男性客の心情を汲み取ったアドバイスにより、ATARUの真価が発揮されていった。













