「金太郎、踏ん張る。」(集英社文庫・コミック版6巻収録)

社畜となった金太郎

『サラリーマン金太郎』第61話では、砂漠で働く金太郎がサラリーマンの辛さを語る。

ナビリアでの工事は少しずつ進み、ようやく現場がかたちになってきた。端から見れば、やっと軌道に乗ってきたようにも見える。だが、現実はそんなに甘くない。

飲料水を運ぶタンクローリーが砂に埋まり、手持ちの水も残りわずか。一番近いオアシスを目指しても、今度は自分たちの車が穴にハマってしまう。さらに現地の警察は賄賂目当てで難癖をつけ、金太郎を何度も捕まえに来る。

そんな中、金太郎は日本へ送ろうとしていた手紙に胸の内を書く。

この国で仕事をすることのしんどさを綴ったうえで、こう漏らすのだ。

「どんなに苦しくても、会社がこのプロジェクトを中止しない限り、俺は仕事をやり続けるしかない。サラリーマンが、こんなに凄まじく過酷な仕事だとは思わなかったよ」

金太郎は喧嘩も強いし、気に入らない相手にはすぐ食ってかかる男だ。だがこのナビリアでは、それだけではどうにもならない。怒っても水は湧かないし、キレても工事は進まない。

そしてなにより、どれだけ理不尽でも、会社がやると決めた以上、自分もやるしかない。金太郎はサラリーマンの現実を、ここで初めて本気で飲み込まされているのだ。

そしてついに、体力の限界が来て倒れてしまう。それでも目を覚ますなり、「す、すみません。今すぐ起きて、仕事しますから……」と口にするのだから、かなりきつい。

いまでこそ“社畜”という言葉は珍しくないが、その語が広まり始めたのは1990年代ともいわれる。ちょうどこの漫画が描かれていた頃だ。そう考えると、金太郎が見せるこの働き方やマインドは、“社畜”的なしんどさを描いていたとも言えるだろう。

もっとも、この回の金太郎は、ただの社畜では終わらない。ボロボロになったところにかけられる、ある上司の言葉で、金太郎の目にはもう一度光が戻る。その瞬間は、ぜひ漫画で確かめてほしい。