年収200万・48歳漫画家の婚活記録

たとえば、2月26日に発売される『独りで死ぬのはイヤだ 年収200万円、48歳独身漫画家の婚活記』(著:中川学)は、年収200万円・48歳独身というリアルな条件のもと、本気で婚活に挑む実録コミックエッセイだ。

『独りで死ぬのはイヤだ 年収200万円、48歳独身漫画家の婚活記』(著:中川学)
『独りで死ぬのはイヤだ 年収200万円、48歳独身漫画家の婚活記』(著:中川学)
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ハイスペックでも、勝ち組でもない。むしろ“条件的には不利”とされる人間が、自分の孤独と向き合い、婚活という市場に飛び込んでいく。その姿に、多くの読者が引き寄せられてきた。

SNSを開けば、婚活アカウントはあふれている。地獄のデート体験談、ハイスペック自慢、年収マウント、男女の対立。強い言葉、極端な例ほど拡散される。特異な体験談をさらし合い、インプレッションを競う世界だ。

だが久保さんの物語は、そのどれでもない。高くはない年収の男性が、一般的な価値観を持ち、普通に努力をし、普通にデートをし、そしてフラれる。ただそれだけだ。

もしこれをSNSの投稿として流したなら、おそらくタイムラインの中に埋もれていただろう。本来ならば、誰も拾うことのない体験談。それでも、多くの人が見て、心を動かされた。

なぜなら、これが“テレビ”だったからだ。

『ザ・ノンフィクション』は、一人の人間を追い、時間をかけて物語を積み重ねる。タイパの時代に、“何も起こらない物語”をあえてじっくりと見る体験を提供し続けている。

もちろん、ただ映すだけではない。情報を取捨選択し、編集し、見やすい形にパッケージングする。テレビにとっては当たり前の工程だが、一般人の密着をこれほど丁寧にできるのは、テレビならではのことだ

SNSで反響を見ると、「TVerで5回は見ました。先程も配信終了直前に見直した」「私は(前後編)それぞれ3回観ました。久保さんに合う方に巡り会えますように願ってます」と何度も繰り返して視聴している人までいるという。

時間をかけて一人の人生を追う構成が、結果として何度も観返される“作品”にまで昇華したことは特筆すべきだ。

文/ライター神山