ファンですら「絶滅危惧種」と認識
「V9の後、長嶋茂雄さんが最初に監督になった年からのファン。昔は負けたらテレビを叩いたり、モノを投げたり、よく当たってたよ(笑)。
昔の巨人はスターぞろいだし、エンタメの王道で、中でも王さんのHRは“華”だったわけ! そのぶん、負けたときは落胆も大きくて荒れやすいんだよね。でも、10年くらい前からやらなくなった」(59歳男性・ファン歴50年)
やはり現代には、巨人の勝敗で周囲に気を遣わせるほど情緒の乱れるオヤジはいないのか。その後は巨人の試合後を狙い、東京ドームの最寄り・水道橋駅と後楽園駅の周辺でも聞き込みを行なった。
この日の巨人は西武に5-0の完封負け、ファンも内心イラついているはず。不機嫌なオヤジの遭遇チャンスだが……。
「後楽園球場の時代から親父と一緒に来てたけど、親父は巨人が負けると不機嫌になってたかも。やっぱり、常勝球団だと負けたときの落胆もデカいんだよ。でもそういう人も減ったよね。俺も怒るまではいかない」(64歳男性・ファン歴55年)
「父は巨人が負けると怒ってましたね。僕は怒るまでは行かないけど、今日、一緒に来た人も怒ってました(笑)。
でもこれって、歴史的に巨人が常勝球団だからこそだと思うんですよ。他球団のファンなら、負けても『まぁいいか』となるけど、巨人ファンは格下にやられた感覚になるから、余計にイラつくんじゃないですかね」(47歳男性・ファン歴36年)
その後、今も試合結果で不機嫌になるという高齢のファンを発見。しかし、今はかなり丸くなったという。
「川上哲治・青田昇の時代からファン。今も負けたら腹立つし、独り身だから気兼ねなく怒ってる(笑)。でも、昔ほどじゃなくなったね。若い頃、負けたから怒って電球を殴ったことがあるんだけど、破片が床に散らばって大変なことになって。それからは抑えてる」 (84歳男性・ファン歴60年超)
こうして各地で巨人ファン中心に計100人を調査した結果、「今でも巨人の試合結果で不機嫌になる/なる人を知っている」と答えたのはわずか5人。「こういう人って巨人ファンの何割くらいだと思う?」との問いには「1割くらい」「1割未満」の回答がもっとも多かったため、人々の肌感覚にも近い結果となった。
生態としては野球居酒屋や球場周辺に潜んでいるが、巨人が交流戦で12球団中11位に沈むストレスフルな状況でさえ、エンカウント率は約5%……。出会うのは幻のポケモン並にレアといえるだろう。
「昭和は遠くなりにけり」ということか。
取材・文/久保慎