〈父のキゲンは、巨人が決めている。〉
話題となったのは、読売巨人軍(ジャイアンツ)公式Xが投稿したポストだ。テレビで巨人戦中継を観ている笑顔の男性のイラストに〈父のキゲンは、巨人が決めている。〉というキャッチコピーが添えられている。好きな球団が勝てば気分も上がるというファン心理を、巨人ファンの父に重ねてノスタルジーを誘っている。
しかし、狙いに反して、同投稿には〈忌まわしい思い出〉〈おかげで野球自体が大嫌いな大人になった〉といった批判的意見も集まった。
中でも目立ったのは、〈現代ではそこまででもないだろうが、これ一昔前は本当にシャレにならない思いをして(被害を受けて)きた人たちがいる話〉〈昭和だと笑い話だけど令和だと毒親感がすごい〉〈典型的な昭和の癇癪持ちお父さんが容易に想像ついちゃうじゃんか!? 今モラハラとかDVが問題視されてんだし〉など、“時代錯誤”を指摘する声だ。
たしかに、昭和~平成中期ごろのプロ野球は国民的娯楽といわれ、中でも巨人は全国にファンを擁する人気球団として君臨した。
それゆえに、巨人の試合展開で一喜一憂するという父親は“あるあるネタ”として扱われ、昭和を舞台にした漫画・アニメ『ちびまる子ちゃん』でも、父・ヒロシが巨人戦中継でイラつき、家族に気を遣わせるシーンが描かれている。
しかし、現代では娯楽の多様化も進み、こうした人物を見聞きすることも激減した感がある。
果たして、家庭や職場に気を遣わせてしまうような、“巨人の試合結果で機嫌が変わるオヤジ”という古き良き(?)ファンは今も存在するのだろうか。
調査を行なうべく訪れたのは、サラリーマンの街として知られる東京・新橋。日夜、家庭のために働く父親も多いこの地で、くだんの巨人ファンを探してみた。
「僕は20年以上巨人ファンですけど、今はほぼいないと思います。感覚ですが……東京ドームのライトスタンドに行く熱心なファンの中でも、そういう人は1割くらいじゃないかと」(32歳男性)
「いるとは思うけど、イライラは心の中だけに抑えていると思う。職場や家庭でピリつくのって、今は問題になるし。それでも我慢できなかったら、野球好きの集まる居酒屋とかでガス抜きしてるんじゃないかな」(51歳男性)