ゴールデン対談「グランドの決闘」で金田正一さんと対談 

『週刊明星』の創刊号(1958年7月27日号)では、ゴールデン対談「グランドの決闘」と称して、ナイター直後の金田正一さんと長嶋茂雄さんの豪華対談が5ページにわたって行なわれた。

当時、金田さんは国鉄(現・東京ヤクルトスワローズ)の鉄腕投手で、巨人入団直後の長嶋茂雄さんを“4打席連続三振”で封じるも、その後の試合でホームランを放たれるという“バッチバチ”状態。

対談はさぞかし緊張感漂うムードになるかと思いきや、意外にも二人の態度はくだけていた。

1958年7月27日号『週刊明星』より
1958年7月27日号『週刊明星』より
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1958年4月5日に行われた国鉄vs巨人戦に3番サードで先発出場した長嶋さんは“4打席連続三振”した当時のことを、このように笑いながら話をしていた。

長嶋 いやあ、あのときは完全に敗けました。きっと一生忘れられないでしょうね。バッター・ボックスに立った、初球がきたでしょう、ハッとしましたね。そのときはもう空振り!(笑)

金田 ハッハッハ……(と、うれしそうに料理をつつく)

長嶋 ああいう、想像した以上の球の速さにぶつかったということは、開幕早々大変いい勉強になりましたね。ただスゴいなあ、というそれだけですよ。

金田 あのときは調子がよかったんだ、ワシは。

『週刊明星』1958年7月27日号(創刊号)より抜粋

記者からの「金田さんの投球を、いろいろ研究しましたか?」の問いに長嶋さんはこう答える。

長嶋 そりゃもう、研究したですよ。あらゆる面で研究したけれどバッター・ボックスにはいったらそうは当るものじゃないですよ。よほど自分が最高のコンディションのときか、金田さんの調子のわるいときでないと……。

記者 開幕のとき金田さんが言ってたでしょう。左右の動きには、長嶋さんはすごく耐えてゆけるけど、上下の動きには弱いというような……

金田 そんなこというたかな。

長嶋 実際そうだもの、ぼく。いまでも横の変化には動けるけど、縦の幅、あれは弱いですよ。まあ、なんといったって第一回戦でヒネられたときは、全然眠れなかったですね。でも、朝起きたときはもうサッパリしてました。これから出直そうと思って……

金田 しかしあとで見事に仇をとられた。(笑)とにかく天才だよ。よく研究してるし、考えること、やること、すべてちがうよ。ホームラン打たれたときは、やられたって思ったね。

『週刊明星』1957年7月27日号(創刊号)より抜粋

この後、金田さんは八丁味噌の味噌汁にご飯を入れてザブザブとかき混ぜて食べながら「あんた、やらないの。ワシはこれをやる。うまいぜ、やってみない?」と長嶋さんを誘うも、長嶋さんは「いや、結構です」ときっぱり断る様子が絶妙な対談であった。