ベントレーに乗った“オーナー”との相対 

エレベーターが止まった3日後の5月16日、住人の引っ越しに際し、オーナー側と住人たちが相対した。

「引っ越し作業の時にエレベーターが動かなければ困るため、オーナーに電話しました。電話に出たのはタチバナを名乗る男性で、日本語がたどたどしく、『僕はアルバイトなので分かりません』と言い出す始末でしたが、ショートメールでやり取りして、引っ越しの日はエレベーターが動くという回答が来たのです」(30代の女性)

しかし当日、エレベーターの運転は再開されなかった。引っ越し業者は、急きょ、1人増員して4人体制で5階から階段を使って荷物を運び出した。

その間に再びオーナーに電話すると、また別の男が出て「タチバナは辞めた。立ち合いには行く」と言い出したが、誰が来るのか分からなかった。連携を果たしていた住人たちは立ち合いが来るのを待ち構えていたが、現れたのは2月に7階の女性住人に退去を迫った「中村」と名乗る男だった。

中村氏(写真/住人提供)
中村氏(写真/住人提供)

女性の住人が、何か起きた時の証拠とするためにカメラを回していた。中村が退去した部屋の立ち合いを行なう時、カメラを持って一緒に入ると、中村はカメラに気づいて「肖像権の侵害だ!」と大声で怒鳴り始めた。そして中村は110番通報するが、その時は「キョウ(姜)」を名乗ったという。中村も、そして住人達も警察署へ行ったが、中村は警察署でもギャーギャー喚いていたという。

70代後半の女性は「(中村は)ボロボロのTシャツでやってきて……」と漏らしたが、実は海外ブランドの高級品で1着2万円のTシャツだった。この時、マンションの近くに白色と金色の2台の英国製高級車ベントレーが停められ、辞めたはずのタチバナがウロウロしていた姿が目撃されている。1台は中村が、もう1台はタチバナが運転して来たものだった。

テレビ朝日が“事実上のオーナー”を直撃

6月に入ると、テレビ各局がこの問題を続々と報じ、反響が大きくなった。

「集英社オンラインが報じた時は、住人たちはバラバラで、事情もよく分からず、記事を見て、初めて知ったこともあったぐらいでした。住人でLINEのグループを作り、テレビや新聞にも働きかけようというコンセンサスができて、5月末までに、知っている限りのマスコミに情報を提供したのです」(50代の男性)

6月4日、また別の住人が引っ越す際には、退去の立ち合いに来る“オーナー”をテレビ各局が待ち構えた。

「来たのは中村でした。当初、7階の部屋を回ってオーナーを名乗っていた男ですが、テレビ局が直撃すると『私はオーナーじゃない』と言い出し、逃げ回った末にベントレーを置いて行ってしまったのです」(70代後半の女性)

中村氏らが乗っていたベントレー(住人提供)
中村氏らが乗っていたベントレー(住人提供)

テレビ朝日は中国に住む“事実上のオーナー”への取材に成功し、6月9日の日曜日、午後8時56分からの「有働Times」(テレビ朝日)で、その様子が放送された。

オーナーであるO社は、2人の中国人が代表として登記されていた。住所を板橋区としている中国人は、テレビ朝日の取材に「私は名義を貸しているだけ」と答え、マンションを購入したことも知らず、事実上のオーナーは中国に住む中国人だと話した。

中国の遼寧省を住所とする“事実上のオーナー”は、テレビ朝日の取材に対し、香港などで不動産投資を行なっており、家賃の大幅値上げは「普通のこと」と答えたが、「反発が大きいと聞いたので、家賃の値上げはやめます、来週月曜日(9日)にも通知を出します」と話したのだ。