「金太郎、転勤する。」(集英社文庫・コミック版4巻収録)

新幹線のトイレで遭遇した大物

新幹線のトイレで偶然出会った老人が、実は大物政治家だった。そんな奇跡のような出来事が描かれるのが、『サラリーマン金太郎』第38話だ。

東北支社への転勤が決まり、金太郎は息子の竜太を連れて新幹線に乗り込む。そして車内でトイレのドアを開けた瞬間、中では老人が和式便器で用を足している最中だった。

突然ドアを開けられたにもかかわらず、老人は落ち着いた様子で「ノックぐらいせんかっ」
と言う。

金太郎は慌てて謝るが、老人はなぜかフレンドリーで、「気が散るとクソの出が悪いぞ」と言い、金太郎が用を足している間、竜太を預かってくれると申し出た。

金太郎が用を済ませて席に戻ると、老人は竜太と並んで座り、アイスクリームまで買って待っていた。

「ケツの穴を見られた縁じゃ」と器が大きくて豪快な老人だ。

ところで、このシーンで描かれているのは和式トイレだが、現在ではかなり珍しい存在になっている。

東海道新幹線では2018年にJR東海が改修方針を発表し、全17駅の改札内トイレをすべて洋式化。2020年までに温水洗浄便座付きの洋式トイレへと更新され、改札内から和式トイレは姿を消した。

車両のトイレも同様に洋式化が進んでいる。東海道・山陽新幹線で主力となっているN700系では洋式トイレが中心となり、最新のN700Sでは和式トイレは基本的に採用されていない。漫画に登場した東北新幹線でも同じような状態だという。

さて、そんなトイレで偶然出会ったこの老人。実はただ者ではなかった。

列車が東北の駅に到着すると、ホームには大勢の人間が集まっていた。盛大に老人を出迎える民衆。ここで金太郎は、ようやく老人の正体を知ることになる。

彼は山金幸四郎。民主自由党の実力者であり、東北を代表する大物政治家だったのだ。

トイレでケツを見られ、息子にアイスを買ってくれた気さくな老人――その人物が、実は政界の重鎮だった。その事実を知った金太郎は、思わずこうつぶやく。

「政治家か……ケツの穴見せても、腹の中は見せねえタイプだな……」

新幹線のトイレから始まる奇妙な出会い。果たしてこの政治家と金太郎は、ここからどのようにドラマを作っていくのか。続きは漫画で。