「東北支社副支社長」(集英社文庫・コミック版4巻収録)

金太郎が巻き込まれた談合の現場

公共工事の入札は、本当に公平に決まっているのだろうか。そんな疑問を思わず抱かせるシーンが描かれるのが、『サラリーマン金太郎』第39話だ。

東北支社に赴任した金太郎は、副支社長の伊郷のもとで働くことになる。ところが伊郷は、いきなり金太郎に市役所の入札へ行くよう命じる。事情もよくわからないまま会場に向かった金太郎はそこで、入札に参加する建設会社の担当者の一人に、ある金額が書かれた紙を差し出されてこう告げられる。

「今日はうちが本命やらしてもらう。あんたん所はこれだよ。これで出してくれ」

つまり、どの会社が落札するかは、すでに決まっていたのである。

こうした行為は一般に「談合」と呼ばれる。談合とは、本来は競争によって決まるはずの入札価格を、業者同士が事前に話し合って決めてしまうことだ。表向きは競争入札でも、実際には「今回はこの会社が取る」と順番が決まっているケースもある。

もちろん、こうした行為は日本では違法だ。談合は独占禁止法で禁止されており、発覚すれば企業や関係者が処分を受けることになる。実際、日本では1993年に大手ゼネコンが関わった「ゼネコン汚職事件」が大きな社会問題となった。

しかし金太郎は、そんな業界の裏事情をまったく知らない。

入札の結果、ヤマト建設は書類不備で失格。会場を出た金太郎は業者たちに誘われて酒の席へ。彼らは落札を祝って酒席を設けつつ、落札した会社の担当者からお金の入った封筒をもらっている。談合に協力してくれた見返りというわけだ。

困惑する金太郎に、伊郷は淡々と言い放つ。

「それがこれからのお前の仕事ってことよ」
「サラリーマンってのはな、自分に嘘をつかなきゃやってられねえ商売なんだよ」

理想や正義だけでは生きていけない――。そんな現実が金太郎に突きつけられる。

綺麗事では済まない社会の裏側を知り、それでも前に進もうとする金太郎。談合という現実を前に、彼が伊郷に何を言い返したのか。第39話でぜひ読んでほしい。