1位は有名俳優の熱演が話題を呼んだあの名作
BEST2:戦争経験者と戦争を知らない世代が入り交じる2017年度前期『ひよっこ』(主演:有村架純)
東京オリンピックが開催された昭和39年から始まる「戦後」の物語だが、物語中盤でヒロイン・みね子の叔父・宗男(峯田和伸)が戦時中、ビルマ戦線のインパール作戦に出征していたことが明らかになり、生々しい当時の記憶をみんなの前で語る場面がある。
「その場には戦争経験者だけでなく、みね子のように戦後生まれの若者もおり、戦争を知らない世代に、戦争体験を伝えるという意義を感じました。戦地の描写はなく、一人の男が過去を振り返るシーンなのに、あらゆる視点が入る。
さらに太平洋戦争当時は敵国だったイギリスのミュージシャン、ビートルズの来日などを作品では大きく取り上げ、峯田和伸が演じた宗男を通して戦争を語らせたという点でも細やかな演出が生きた傑作でした」
BEST1:母の葛藤と苦しみを描いた2013年度後期『ごちそうさん』(主演:杏)
「意外にも息子を失う悲しさをヒロイン目線で描いた朝ドラは近年では珍しい」というのが、2013年度後期『ごちそうさん』。食いしん坊のヒロイン・卯野め以子(杏)が大阪の西門家に嫁ぎ、食を通じて家族や周囲の人々と心を通わせていく物語だ。
「ヒロイン・め以子の次男、活男(西畑大吾)が志願兵になった末に戦死するのですが、杏さんの心の葛藤や悲しみに打ちひしがれる迫真の演技が話題を呼びました」
また、菅田将暉演じる長男の泰介も赤紙が届き出征するのだが、出征前夜の親子のやり取りを半澤氏は名場面としてあげる。
〈お母さんは、1番大事なことを教えてくれたで。生きてるゆうことは、生かされてきとるということなんやて。僕は命の犠牲の上になりたった命の塊なんやて。だから僕の命は擦り切れるまで使いたい〉〈僕は僕にそれを許さんかったこの時代を、絶対に許さへん〉
「おそらく泰介という役には最初から出征シーンが予定されていたはずで、そこに当時の若手俳優だった菅田将暉をぶつけたのが名キャスティングでした」
今年は戦後80年。近年は戦争を扱う作品やコンテンツは減少傾向にあるものの、幅広い世代が視聴する朝ドラがあらゆる視点から戦争を描き、伝えていくことの意義は大きいだろう。
取材・文/木下未希