1週間で決めた出馬、当選するとは思わず…
━━6月28日に公開になる映画『選挙と鬱』。水道橋博士が当選するまでの選挙戦と、その後、鬱で議員辞職し、それ以降の博士の人生まで追った映画ですが、当初と予定が違ったというお話を伺いました。
青柳拓(以下、青柳) 当初、映画自体は当選して初登院するところまでで終わっていたんですが、博士さんが鬱になり『選挙と鬱』として再編集したんです。
博士さんが大阪市庁舎に乗り込んでいくところとか、街宣車でモノマネ大会になって、マイクでバルタン星人の真似していたり、チリ紙交換ふうに“政権交換”を宣伝したりというのを、泣く泣く大幅にカットしましたね。
水道橋博士(以下、博士) ボクとしては選挙カーを使って、どれだけ音の遊びができるかということを試していたんだよね。かつての『スネークマンショー』のような聴覚によるコメディ。舞台装置としての選挙は絶好の機会でした。「ちり紙交換」と「政権交代」をパロディにしたり。
青柳 左よりのれいわ(新選組)の人がアパホテルに泊まり、置いてある右よりのものを物色するところとかも撮りましたよね。
博士 日記を読み返すと、選挙戦を記録しておくことはもともと自分でも考えていたんだよね。でもどうせ選挙に出るなら、ちゃんと残そうとなって、町山智浩さんが青柳監督を推薦してくれた。
初めて会ったときには、もう選挙でやることがいっぱいあり過ぎて「じゃあ、ヨロシク」の一言だけだったよね。
青柳 博士さんが阿佐ヶ谷でライブをしたあと、僕が声をかけたんですよね。「命がけでやります」と僕が言ったのが博士のnoteの日記に書かれていて覚えています。
ただ僕としては、最初、どこまで政策とかの準備をしているんだろうかと考えながら見ていたんですよ。
博士 選挙戦なんて本当は1、2年かけて準備するのが普通だからね。それを1週間で出馬を決めたんだから、勝てるなんて微塵も思ってなかったし。
もともと政策も、ボクが大阪の維新の松井市長に訴えられた、スラップ裁判への口封じに対する抗議を可視化することだけだった。
青柳 撮影を開始した最初の頃は、「これは負ける」というのが伝わってきて。だから『レスラー』という、ミッキーロークの映画をイメージしていたんです。無様に負けたとしても本気さを撮れば伝わるものはあるぞと。