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選挙取材の「真打」登場

水道橋博士(以下、博士) ついに選挙ドキュメンタリーに「真打」が現れましたね。

前田亜紀(以下、前田) 博士はかなり昔から畠山さんのことをご存じだったそうですね。

博士 もう20年くらい前かなあ。大川豊総裁(大川興業)の座付き作家的な存在で、総裁が政治を面白がる連載を雑誌でやっていたときですよね。総裁はお笑いの視点で「インディーズ候補」といって、変わった立候補者たちを取材していたんだけど、畠山さんが後々書く『黙殺』(2017年・開高健ノンフィクション賞受賞作)や『コロナ時代の選挙漫遊記』(2021年)を読むと、すべての候補者をリスペクトしていて、ボクも啓蒙されてしまった。

畠山理仁(以下、畠山) あ、ありがとうございます!

「ボクの政策秘書になってくれ」参院選で当選した水道橋博士の打診に“元祖・選挙ライター”の出した答えは…【映画『NO選挙,NO LIFE』を語る】_1
『NO選挙,NO LIFE』ポスタービジュアル
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博士 じつはボクが昨年の参院選に出馬を決めたのは、畠山さんの本と大島新監督の『香川1区』の影響もあります。

前田 ええー、そうなんですか?

畠山 いや、博士が立候補されたのは、私の本よりも維新の件が大きかったのでは?

博士 おっ、鋭いところをつくねえ。今年の12月21日に裁判(博士のSNS投稿が名誉棄損にあたると日本維新の会・松井一郎前代表から訴えられ高裁にて係争中)の判決が出るので、勝っても負けても記者会見をやりますが、たしかにそこは大きい。ただ、選挙をひとつの祭りとして楽しむというのは、ネツゲン(大島監督、前田監督が所属する映像制作会社)の一連の映画の影響は大きいよね。

前田 その流れで見た博士が考えるこの映画の位置づけは?

博士 ネツゲンのほかに富山の映画があったでしょう。

畠山 『はりぼて』ですね。富山市議会の政務活動費不正流用を暴いていった。

博士 そうそう。あの『はりぼて』はコメディの面白さですよね。カメラが張りつけば、いくらでも「日本村」の面白おかしい土着的な文化構造、どこに権力の由来があるかを暴きだせるというのを実証してみせた。それは『香川1区』もそう。ドキュメンタリー映画界にとって、ネツゲンが開拓したこの路線は大きな金山発掘ですよね。