シミュレーションしたら三原じゅんこに惨敗するデータが…

━━監督から博士に要望されたのは「編集権」は自分が持ちたいということだったそうですが。

博士 雇われ監督を提案したら、それなら青柳くんがやりませんと言うんだよね。はっきり。製作費も自分で出すと言うのを聞いて、ボクは「映画は監督のものだから、口出しは一切しない」と約束したんですよね。

━━ところで、1週間で出馬を決めた選挙、勝算はあったんですか?

博士 映画の中でも選挙の見通しを聞かれて話すんだけど、「登山部に入ったらいきなりエベレストを登れ」と言われるようなもの。

ただ、事前の票読みというのは精度が高くて、最初、神奈川選挙区でシミュレーションしたら三原じゅんこに惨敗というデータをれいわの選対から示され、わずかに可能性のある比例区になったという流れです。

青柳 僕が初めて見た時は、演説の姿勢がハマっていないというか……。

博士 監督が撮影入る前に中野でやった演説は、誰もいないところで鳩とマンツーマンの対話でやってたよ。オフザケしかやってなかった。

青柳 それ、撮りたかったです (笑)。

撮影当初は、「負けムードしか漂ってなかった」と語る青柳監督(写真/集英社オンライン)
撮影当初は、「負けムードしか漂ってなかった」と語る青柳監督(写真/集英社オンライン)

博士 選挙ではあるんだけど、こっちはコメディアンだからね。むしろ真面目な演説を始めたのは、監督がカメラを回し始めたあの日から。

青柳 それがどうにもぎこちなくて。これはもうどういうポジションで自分が居たらいいのか、わからなくて。

博士 あの日、言っていたよね。「演説がイケてなかった」って。

青柳 だから、「博士さんは本気なんですか?」とカメラを向けながら選挙事務所で訊いたんですよね。僕も撮影初日だったから、もうどうなってもいいやと。「勝つ気はあるんですか?」とも。

博士 最初、ボクは昔の参議院の全国区時代の青島幸男の選挙みたいにやりたいと思っていたの。立候補だけして海外に行く。お金もかからないし、選挙に対する批評になるから。

でも、「博士にはそこまでの知名度はありません」と言われて断念。

選挙戦中の水道橋博士(『選挙と鬱』より。©ノンデライコ/水口屋フィルム)
選挙戦中の水道橋博士(『選挙と鬱』より。©ノンデライコ/水口屋フィルム)

青柳 立候補したらまったくテレビには出られないし、どうやって認知を広げるかというので、ライブ中継し、日記を書き、可視化するための戦略を練っていく。その姿を真横で見ていて、こんなに大変なことをしながらでも毎日、noteの日記は書き続ける。このひとが国会に入ったらどうなるんだろうという期待は日に日に膨らんでいきましたね。

博士 千葉県での演説周りに灼熱の日があって、あそこでも思ったけど、あの参院選はある意味“罰ゲーム”を自分に設定しながらやっていたんだよね。

青柳 選挙アドバイザーの人から博士さん率いる素人チームがスパルタ指導を受けるという日でしたよね。炎天下の中で、博士がノンストップで演説し声をかけ回る姿、めまいがするのをなんとか耐えて活動していたのを撮ることができました。

博士 カメラがある限り、ボクは逆境を面白がるタイプだから大丈夫だったんだけどね。