裏金疑惑が追及されていた23年11月に2回にわたり修正
不記載があったのは荒木氏が代表を務める後援会の政治資金収支報告書(2022年度)。
①2022年の参院選挙の際に、国民民主党から参院選挙推薦料として受け取った500万円と、②同年1月に都民ファーストの会から寄付として受け取った272万円、計2点を記載していなかった。
23年11月に2回にわたり修正をしているが、修正された当時は、自民党による派閥のパーティー券による裏金疑惑が追及されていた。派閥の議員らはパーティー券のキックバック分を政治資金収支報告書に記載していなかったことが違法にあたるとされていた。
総務省によると、政治資金規正法では、政治資金収支報告書に記載すべき情報を記入しないことは「不記載」として扱われる。その場合、政治家や政治団体は、刑事罰や公民権の停止などの罰則を受けることがある。
不記載が明らかになった荒木氏は小池百合子都知事の「愛弟子」「妹分」として知られている。
都民ファーストの会のホームページなどによれば、荒木氏は熊本県出身で、物心ついたときから、小池氏に憧れていたという。29歳のときに履歴書一枚を持ち議員会館へ飛び込み、そこから6年間小池氏の秘書として活動。その後、17年に都議会議員に初当選し、現在は2期目になる。また、17〜22年にかけて荒木氏は都民ファーストの会の代表を務めていた。
小池都知事の「愛弟子」「妹分」として知られる元秘書の荒木氏(荒木事務所)
今年1月に発覚した都議会自民党での1000万円を超える裏金問題をめぐって、都民ファーストの会は2月、政治倫理条例の制定をめざす委員会の設置案を自公とともに提出し、可決されている。裏金を批判する姿勢の都民ファーストだが、特別顧問を務める荒木氏の不記載だった金額は772万円と高額で、説明責任が問われる。
知事与党として活動する自公都民ファが合同で設置した「政治倫理条例検討委員会」では5月21日、立民の関口健太郎都議が「都民ファーストの会からの272万円の収入は政治資金パーティーのキックバック分なのではないか」と指摘した。
関口氏は集英社オンラインの取材に対して、「都民ファーストの会の支出を見ると同日に多数の都民ファーストの都議にキックバック分とされる支出があることからキックバックであることが推測される。政治資金収支報告書の修正をしたとはいえ、政治資金パーティーのキックバック不記載は自民党によるパーティーの不記載問題と全く同じ構図だ」と問題点を説明した。
また修正日が2023年11月で、当時は自民党のパーティー券をめぐる裏金問題が話題になっていた。関口氏は修正の時期について、「国会での自民党による派閥パーティーの裏金問題が明らかになったあと、荒木都議が政治資金収支報告書の訂正をした。時期を見れば悪質である」と主張する。
そのうえで、荒木氏が修正したことについて、「そもそも参院選候補としての政治資金収支報告書であることから監査人報告書が添付されている。にもかかわらず、772万円の不記載が放置されていたのは、より故意的な修正であると考える」と指摘した。
政治倫理条例検討委員会は今週の委員会で、荒木氏に対する文書質問を求める方針だ。