貸主へのサポート範囲が成否を分ける

賃貸オーナーが抱える問題を解決する兆しは見えるものの、後藤氏は施行後の結果を見てみないと判断できないと指摘する。

「たしかに賃貸オーナーへのサポートは手厚くなっているように思われます。しかし、最終的に高齢者に貸すのは、居住支援法人ではなく賃貸オーナーです。結局、隣人からのクレームはすべて賃貸オーナーに寄せられることになるので、高齢者特有の問題への不安は完全には拭えないでしょう。見守りサービスの範囲も現状ではまだ不明確です。安否確認の際にはプライバシーの問題が生じる可能性があるので、実際どこまで対応できるのか……。

ただし、制度施行後にこれらの課題に真摯に向き合い、居住支援法人が実効性のある解決策を提供できれば、状況は大きく改善するでしょう。課題は山積していますが、10年以上前と比べると、高齢者への住宅支援は着実に前進しています。とくに居住支援法人による残置物の処理が言及されたことは大きな進展です」

写真はイメージです
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住宅セーフティネット制度は施行前であり、不明確な点は残るものの、住む場所を確保するための仕組みづくりは着実に進展している。今回の制度改正だけでは解決が難しい課題もあるが、これまでの問題点を十分に考慮した改正内容となっており、適切な運用によって改善も期待できるだろう。今後の展開に注目していきたい。

取材・文/福永太郎 写真/Shutterstock