住める場所が限られる、住宅セーフティネット制度

一般的な不動産物件は極めて借りにくい状況にあるが、他の選択肢も存在する。ただ、選択肢の一つである都営住宅は、入居募集は年に数回のみで競争率が高く、必ずしも抽選に当たるとは限らない。UR賃貸住宅は入居のハードルが比較的低いものの、家賃水準が高いため、入居可能な層が限られている。

こうした高齢者の賃貸住宅の課題の解決を目指しているのが、2017年にスタートした「住宅セーフティネット制度」だ。この制度では、高齢者や障がい者、低所得者などの「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない住宅を提供している。

賃貸オーナーが物件を登録すると、国や自治体からの登録協力報奨金や改修費の補助を受けられる可能性があり、空室対策や社会貢献にもつながる。物件はセーフティネット住宅情報提供システムから検索できる。

セーフティネット住宅情報提供システム
https://safetynet-jutaku.mlit.go.jp/guest/index.php
セーフティネット住宅情報提供システム
https://safetynet-jutaku.mlit.go.jp/guest/index.php

住宅セーフティネット制度は高齢者の住宅問題の解決策として期待されてきたが、2017年から運用されている現行制度にはいくつかの課題がある。

「セーフティネットという言葉の通り、条件を満たせば、最低限の住居は確保されるため、路頭に迷うことはありません。ただし、物件数が極めて限られているため、希望する条件の物件を見つけることは難しく、住み慣れた土地からの移転を余儀なくされることもあります。

その結果、かかりつけ医から離れ、電車での通院を強いられたり、通えなくなるケースが生じています。紫原瑛できる家賃が限られている場合、エリアによっては物件の大半が築年数の長い木造アパートであり、鉄筋コンクリート造の物件を見つけることは一層困難です」

また、高齢者の入居に関する根本的な課題は依然として未解決であり、登録されている物件数も限定的だ。ただ、2025年10月から施行される「改正住宅セーフティネット法」により、高齢者を受け入れる賃貸オーナーのリスクが軽減され、問題の改善が期待されている。

まず、「家賃債務保証業者の登録制度」の創設により、高齢者や低所得者が家賃保証を受けやすくなる。これまで入居の障壁となっていた保証人の確保が解消され、家賃滞納のリスクへの不安も軽減される。

また、「終身建物賃貸借」の利用促進により、入居者が死亡した場合の相続人への契約引き継ぎが不要となる。従来の賃貸契約では、相続人への契約引き継ぎ、契約解除、遺留品の処理などの手続きが必要で、入居者の死亡後の空室期間が長引くリスクがあった。本制度では、入居者の死亡時点で契約が終了するため、賃貸オーナーは相続人との交渉や煩雑な手続きから解放される。

さらに、居住支援法人が入居者死亡時の家具や家電などの残置物処理をサポートし、賃貸オーナーの負担が軽減される。加えて、居住支援法人の定期的な訪問による安否確認など、入居者への見守りサポート体制も強化される見込みだ。