「金太郎、現場に入る。」(集英社文庫・コミック版6巻収録)

最悪の工事現場を前にする

『サラリーマン金太郎』第54話は、ナビリア赴任がついに“文化の違い”とか“海外勤務の大変さ”では済まない領域に入る回である。

電話線を通す工事のため、砂漠の現場へ向かう金太郎は、まず移動の時点で地獄を見る。車は砂に取られ、埋まれば自分で押し出すしかない。気温計は58度を示し、急斜面をそのまま車で滑り降りるような場面まである。

ようやく現場に着いたかと思えば、そこには想像していたような工事の光景はない。人手は足りず、資材も見当たらず、通訳すらいないのだ。

さらに深刻なのは、水と食料である。現場には「何も来ていない」という状態。砂漠のど真ん中ではそれがそのまま命に関わる話になる。

そして案の定、その夜。わずかに集まっていた作業員たちは逃げ出してしまった。

「夜逃げ」という言葉がぴったりの展開だが、彼他のことを責めきれないのも事実だろう。言葉も通じない。先の見通しも立たない。水も食料もない。しかも周囲は見渡す限り砂漠。ここで「もう無理だ」と思うのは当然だ。

結果として残されたのは、金太郎と同行人のハシリだけ。現場について早々に、工事をどう進めるか以前に、まず生き残れるのかという話になってしまうような展開である。

これまで金太郎は、荒くれ者たちをまとめあげてトンネル工事を成功させ、市の不正も暴いてきた。

だが今回は、そもそもまとめあげるべき作業員がいない。しかも、檄を飛ばそうにも言葉が通じない。これまでの“金太郎らしさ”が、そのままでは通用しない現場に放り込まれているのだ。

果たしてこの絶望的な状況を、金太郎はどのように打破していくのか。最低最悪のスタートを切った工事の行方を、ぜひ漫画で確かめてほしい。