記者に問い詰められた斎藤知事は…
結局、財務部が調査に入ったこと自体、Aさんの通報内容は確認する必要があると判断されたということになる。
そして調査の結果、是正すべき部分があると判断されたことで通報が嘘ではなかったことがはっきりした。そこでこの記者はさらに斎藤知事を問い詰めた。
「今回3月の文書とほぼ同じ内容の4月の公益通報について、公益性、真実相当性が一定認められたことで、3月の文書も外部通報の要件を満たす可能性が出てきたと考えられる。3月の文書の告発者をいきなり捜す初動対応が不適切だったことが、今回の内部通報(への県の対応)からも推認される」
これに対し斎藤氏は、「3月の半ば(の告発文書)については我々としては公益通報というよりも真実相当性含めてですね、確認できなかったというところで初動も含めて対応させていただいて。そして公益通報をしたということではなくて、作成された文書の内容も含めて4つの非違行為をされたということで懲戒処分させていただいた。これについては適切な対応だったという風に考えてます」と答えた。
3月の文書は真実相当性が「確認できなかった」ので、発信者探しという「初動」をしたというのだ。
だが斎藤氏はこれまで、3月文書が公益通報に当たらないと判断した理由として「誹謗中傷性の高い文書」だからだと言い続けてきた。
文書の真偽に関する表現が大きく変わったと記者に指摘された斎藤氏は、これに対し、「(3月文書は)元県民局長(Aさん)がうわさ話を集めて作成したということでしたから、これが外部通報の保護要件に該当することにはならないという風に判断したということです」と返答した。
4月通報とほぼ同じ文面の内容よりも、Aさんが「うわさ話を集めて作成した」と供述したことを重視し、嘘八百だと思ったというのだ。
だが「うわさ話」を集めたというAさんの供述は、斎藤氏が発信者探しを指示した4日後の3月25日、片山副知事の事情聴取で初めて出ている。
告発内容の多くに根拠があることが見えてきた今、情報源を守る方便だった可能性も高いが、それを考慮の外においても、斎藤氏が犯人探しという「初動」を命じた時点ではうわさ話というキーワードは存在していない。
「真実性の有無にかかわらず、公益通報ではないと勝手に判断すること自体、公益通報者保護法の趣旨から外れていますが、それ以前に斎藤氏の説明は矛盾が目立ちます」(フリージャーナリスト)
斎藤氏の会見と同じ時間帯に、百条委は12月25日に斎藤・片山両氏を証人として呼ぶことを決めた。「出席についてのご要請があれば、そこはしっかりと対応していきたい」。そう述べ、斎藤氏は逃げない姿勢を強調する。
クリスマスの尋問は、Aさんが訴えた疑惑を追及する山場になりそうだ。
一方で斎藤氏を巡っては、西宮市のPR会社「merchu」の代表取締役・折田楓氏が公職選挙法で買収に当たる可能性がある、インターネットを使った有償の選挙運動を斎藤陣営で行なったと“暴露”した問題もくすぶり続ける。
2025年も兵庫県政の大混乱は続きそうだ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班