選挙とは思えない下品な罵倒の文字が並ぶ街頭演説会

南海本線の泉大津駅前で8日正午すぎに始まった立花氏の街頭演説会には数百人が集まった。兵庫県知事選で立花氏は、斎藤氏の演説の直前や直後に同じ場所で演説をすることを繰り返し、斎藤氏の支持者か立花氏の支持者か区別不能の大群衆に囲まれたが、今回は自分ひとりの選挙戦で大勢の聴衆を集めた。

12月8日、多数の聴衆と抗議のプラカードが集まった泉大津駅前の立花孝志氏の街頭演説(撮影/集英社オンライン)
12月8日、多数の聴衆と抗議のプラカードが集まった泉大津駅前の立花孝志氏の街頭演説(撮影/集英社オンライン)
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違ったのは、非難するプラカードの数が兵庫県知事選のときの数倍に増えたことだ。

「ドアホ」、「クズ」など選挙とは思えない下品な罵倒の文字が並ぶ前で立花氏が演説を始めるやいなや、支持者が抗議者に手を出したらしくトラブルが発生。

警察官らしい私服の数人に男性が連れていかれ、その後も、立花氏の近くで「兵庫県をオモチャにしやがって! 絶対許さん!!」と書いたプラカードを掲げた男性が、後ろにいた別の男性に殴られる場面もあった。

立花氏当人は慣れた様子で「前出てきてしゃべり。ようしゃべらんの?」と抗議者らを指し、演台を譲るから言いたいことを言えと挑発。

これに応じた男性の一人が、持ってきたプラカードを立花氏の陣営関係者に持たせてマイクを握り、演台に上がって立花氏と罵り合う場面も展開された。

演台に上がって立花孝志氏と罵り合う抗議者の男性。後ろのプラカードを立花陣営関係者に持たせている(撮影/集英社オンライン)
演台に上がって立花孝志氏と罵り合う抗議者の男性。後ろのプラカードを立花陣営関係者に持たせている(撮影/集英社オンライン)

 男性「立花孝志はね、兵庫県知事選で県民局長に対するデマを撒きまくって斎藤を当選させたんやね。二馬力で。デマや。証拠出せや、不倫の証拠出せや」

立花氏「不倫の証拠って出しているやん。県民局長のパソコン公開してるやん」

男性「あんなもん証拠になるか、あほ」

立花氏「こういう人はどうやっても無理ですよね」

男性が言う「県民局長」とは、今年3月に斎藤知事のパワハラや公金不正支出などの疑惑をメディアなどに告発した当時の西播磨県民局長・Aさん(60)のことだ。

斎藤氏の側近だった当時の副知事・片山安孝氏(7月に辞職)が公益通報者保護法違反の疑いがある「告発者探し」の過程で、Aさんの県公用パソコンから個人情報を入手。それを別の県幹部が県議らに見せて回り、Aさんがそのことで苦しんでいたことが分かっている。Aさんはその後、7月に自死した。

片山前副知事(撮影/集英社オンライン)
片山前副知事(撮影/集英社オンライン)

知事選に出た立花氏はこの個人情報の“中身”として、不倫や不同意性交にあたる不適切な関係の記録があると口にし、県議会やマスコミはこれを隠して無実の斎藤氏を陥れた、と演説やポスターで主張。

これがネットで拡散され斎藤氏の支持拡大につながった。立花氏は選挙後の11月29日からはパソコンに入っていたとする写真もSNSで拡散させている。「パソコン公開してるやん」とは、このことを指すとみられる。

一方で、真偽の確認もできない個人情報であるため、テレビや新聞は選挙期間中もその後もこれにはほとんど触れていない。

こうした事情もあって斎藤氏の疑惑を県の調査特別委員会(百条委)の活動などを基に報じてきた新聞やテレビなどの「オールドメディア」が、ネットを背景にした斎藤氏支持の世論に「敗北した」との解説が多く飛び交っている。