先のことは仮設住宅に入れたらゆっくり考えたい

食事も日に3度出るようになるなど、震災直後に比べれば少しずつ避難所は生活しやすくなっていった。避難して10日ほどで自衛隊の入浴支援が始まり、重雄さんはお風呂につかったときのことを「生きた心地がする。そのときのみなさんの顔は忘れられない」と語る。

だが、避難生活が続くにつれ久美子さんは生活とは別の部分で不安を感じるようになり、それは今も払拭されたわけではないと話す。

「避難所からは1人、また1人とどんどん人が減っていきました。でも私たちは家が倒壊しているので戻る家がありません。家を直してまた住めるのかどうかもわかりませんが、そんなふうに人が減っていくのを見ていると、『行く場所がある人はいいなあ』という焦りみたいなのを感じていましたね。私たちもずっとこちらでお世話になるわけにもいきませんから……」

崩壊した珠洲市飯田町の商店街の町並み
崩壊した珠洲市飯田町の商店街の町並み

今後のことについては考えても考えても答えが出ないという。重雄さんは現在の心境をこう語る。

「一番は住む場所ですね。それから店をどうするか。そのふたつが頭の中をずっとぐるぐるぐる回っていて、頭が痛いです。まだしっかり考えがまとまっていないのですが、仮に電気が通って家に戻っても住める部屋はひとつだけだと思います。雨漏りもひどいですし、あの状況で果たして生活できるのか……。

仮設住宅に1~2年は入れると聞いてますので、入れたらゆっくり考えなきゃならないと思っています。
あとはお金の問題です。地震保険がどれだけおりるのか、経済的な面も計算して照らし合わせないといけないと思っています。誰かに迷惑だけはかけたくないので」

坂下さん夫婦もまだまだ元の生活に戻るメドは立たない
坂下さん夫婦もまだまだ元の生活に戻るメドは立たない
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地震発生から1ヶ月近くたった今も、被災者たちは先の見えない不安と戦っている。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
撮影/Soichiro Koriyama

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