「男性陣は海に行って大も小もする」

共同生活にはストレスがつきものだが、逆に人の温かみが尊く感じられる瞬間もある。仕事に戻る人たちも徐々に増えてきた。

「オレの船も流された」「息子の家にはずっとはいられない」津波被害も大きかった珠洲市避難所の今「いろんな不安はある。けどな、笑うしかないんだわ」〈能登地震から1ヶ月〉_5

「そりゃあ、みんなで雑魚寝してんだから大きなイビキかくやつもいたり、なんでもかんでも自分のペースではいかねえからストレスが溜まることもあるわな。トイレだってそうだ。集会所のトイレは女性用にして1回1回水を汲んできて流さなきゃいかんし、男性陣は海まで行って大でも小でもしてる。

俺は年金生活だけど、男たちは仕事が始まってるやつも多い。バスの運転手やホームセンターの店長、建設業だったりな。まだ、ふだんよりは早い時間に帰ってこられてるけど避難生活の中では疲労は溜まるだろうな。でも逆にみんなでいろんな物を持ちよってな、少しずつよくなってる部分もあるんだわ」

舟木区長はそう言いながら、新品と見紛うばかりの乾燥機を指差した。

「これは被災したけど傷ついてなかったんで近所の人からもらったんだよ。電気も通ったからもちろん使える。それに倒壊を免れて、お風呂が大丈夫だった家もあるんだわ。そういう家でお風呂を沸かしてみんなで順番に入っているよ。
『使えそうだったから、これ持ってくか?』って電子レンジを集会所に提供してくれた人もいるよ。これから先のこと、仮設住宅だってそうだけど申請を出して全員が全員入れるわけではないだろうし、いろんな不安はある。けどな、笑うしかないんだわ」

電気が復旧してほとんどのひとが自宅に戻ったが、夕食のときは集まって食事をするという
電気が復旧してほとんどのひとが自宅に戻ったが、夕食のときは集まって食事をするという
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舟木区長を含め、被災者が心から笑える日々が待ち遠しい。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
撮影/Soichiro Koriyama

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