「大半の人は珠洲市を離れようとしない」

最大約30人が避難していたが、電気が復旧してからは自分の家で寝泊まりする人が増えたという。

「今はここに寝泊まりしてるのは5~6人だけになったな。ただ、自宅が無事で家に戻ったけど、床まで水浸しになって家電がダメになっちまった人も多い。だから今でも夕飯どきには、集会所にみんなで食材を持ち寄って料理して『いただきます』って食べてるね。こうした生活が続くと、どうしても塞ぎ込んでしまったりネガティブになる人も多いから、みんなでご飯を食べてコミュニケーションを取るようにしとる。

起こったもんは仕方ないし、2ヶ月、3ヶ月で終わるような話じゃない。勝負は長いからな。罹災証明書の申請はみんな出したけど、被害の状況の確認なんかはまだだ。できるだけみんなポジティブに和気あいあいとやるようにしとるよ」

珠洲市三崎町大浜地区唯一の避難所
珠洲市三崎町大浜地区唯一の避難所

この地域を離れて二次避難することも考えているのだろうか。

「もちろん何人かは金沢方面に避難したり、加賀市のホテルに避難したよ。都市部のほうがいざというときに医療の設備もあるし安心だからな。でも、大半の人はここを離れようとしねえ。やっぱり生まれ育った場所に愛着もあるだろうし、いくら娘だ、息子だっていってもずっとお世話になるってのは現実的にはなかなか難しい。

いつまで避難生活が続くかわからないのに、親戚の家に長く居座るのは気が引けるとか、みんな大変な思いをしとるのに自分だけ離れるのも申し訳ないと思っとる人もいるかもしれねえ。本心はわからねえけど。

愛着のある町だからこそ離れられない人も多い
愛着のある町だからこそ離れられない人も多い

それでも現状では、風邪気味の人は症状が重くなる前に珠洲の総合病院や、定期的に健診にくる赤十字のお医者さんに診てもらっとるから病気は未然に防げてると思う。とにかく一日でも早く、前みたいな生活ができるように戻ってほしいわな」