「もしかしたら警察にも会ってるかもな」

長年にわたって“ウチダヒロシ”として世間を欺いてきた男の素顔はどんなものだったのだろうか。工務店のすぐ近くに住む80代の男性は、こう話した。

「工務店ができたのは今から40年以上前。ウチダはその頃はまだいなかったから、住み込みで働くようになったのは40年近く前のことかな。内田の部屋はうちの隣のアパートの2階だよ。手配写真とは全然印象が違うね。髪も短髪でメガネもしてなくて、最近は白髪まじり。

それに常にツバのある帽子、バケットハットを被ってたからね。コロナ前はマスクもせず堂々としていたよ。中肉中背だけど、ウチの女房は『ここ最近は痩せ気味だったわね』なんて言ってたな。今思えば、口まわりは少し手配写真の面影があるかな」

“ウチダヒロシ”が住んでいた木造アパート(撮影/集英社オンライン)
“ウチダヒロシ”が住んでいた木造アパート(撮影/集英社オンライン)

男性は当初、この男の名前も知らなかったが、工務店関係者が“ウチダ”と呼ぶのを聞いて、自然と「ウチダなんだ」と認識していったという。

「隣に住んでるから最低でも月一回ぐらいは顔を見たけど、挨拶するくらいでちゃんとした話はしたことないな。近所の人と話してるとこも見たことない。最後に会ったのは、去年の暮れか年初め。すぐ近くの道端で顔を合わせて『今日仕事は休みか?』って聞いたら『具合悪くて病院行くんだ』って返事してたな」

近所でもおとなしく、目立たない生活をしていたという“ウチダ”だが、酒と音楽が好きだったようだ。男性が続ける。

「10年くらい前までは酔っ払って帰ってきてはラジオを大きい音でジャンジャンかけたりしてたよ。昔はバンドをやってたのか、フォークギターを弾くこともあったね。ラジオがあまりにもうるさいから夜中に『うるせえじゃねえか!』って文句言ったり、その辺に落ちてる角材で窓を叩いたりしたんだけど、酔って寝てるから全然聞こえてねえんだよ。

そのうち、後ろの家が警察に通報したみたいで、それからラジオはかけなくなったな。警察が親方に言ったのか、ウチダ本人に言ったのかわからないけど、もしかしたら警察官にも会ってるかもな」

「ウチダ ヒロシ」が舗装した道(撮影/集英社オンライン)
「ウチダ ヒロシ」が舗装した道(撮影/集英社オンライン)

仮にウチダと接触していたのであれば、神奈川県警は「チャンス」を活かせなかったのかもしれない。

「一応、工務店で働いてるからか、ウチダが余ったコンクリとか廃材で家のまわりのじゃり道を舗装してくれたことがあったよ。別に俺は頼んだりしてないけど、自分も使う道だから歩きやすくしたかったんだろうな。1人で一輪車押してせっせと少しずつ造ってたよ。今回の報道であの『桐島』が死んだとか見ても、ウチダと同一人物だとは知らなかったから、何とも思わなかったよ。でも今日それを知って、『そんな感じの人じゃないのになって』ていう思いだね」