内定取消しが合法(妥当)とされた裁判例
少し古い判例となりますが、今でも気をつけるべき事案です。
この判例では内定者は内定をもらったあとに無届でデモに参加しました。そのときに現行犯として逮捕されたのです(大阪市公安条例等違反)。結果は起訴猶予処分だったのですが、会社は職場の秩序が混乱して、業務の遂行が阻害されるおそれがあるとして、内定を取消しました。
裁判所は、違法行為を積極的に敢行した従業員を雇用することは相当でなく、会社が従業員としての適格性を欠くという判断での内定取消しは違法ではないとしました。(日本電信電話公社事件:大阪高裁 S48.10.29)
犯罪の軽重にもよりますが、犯罪行為が発覚すると内定取消しが妥当と判断される可能性があるでしょう。ほかにも、重大な経歴詐称をすれば内定取消しはもちろん認められると考えられます。
ちなみに、2020年は2月ころから新型コロナウイルスが蔓延したことで、4月入社予定の学生の内定取消しが急増しました。これは、経済活動がほぼストップしてしまったことから企業の売上が激減し、新卒の方の給与を支払う余力がなくなったことが原因です。
新型コロナのような未曾有の事態であれば内定取消しが合法になるケースもあると思いますが、上述した内々定取消しの裁判例のように、単なる経済情勢の悪化を理由に内定取消しが合法になるケースは少ないと考えます。
最後にアドバイスを。
来年の4月にかけて、万が一内定取消しの通知を受けた場合は労働局に申し入れてみましょう。相談料や、解決依頼も無料で相談にのってもらえますよ。
悪質な会社の場合、労働局からの呼び出しを無視することもあるので、そんなときは社外の労働組合か弁護士に相談することをおすすめします。
文/林孝匡
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