内定者研修に参加しなくても、内定を取り消すことはできない

続いて、内定を得たあとの研修についてです。入社前になんらかの研修が行われる会社がほとんどだと思います。そして内定者のほとんどの方が研修に参加されるでしょう。しかし、法律上の原則として、入社前の研修に参加する義務はないのです。

したがって、会社が「内定者研修に参加しなかったから」という理由で内定を取り消すことはできません。参加義務がないことは裁判所も明言しています(宣伝会議事件:東京地裁 H17.1.28)。裁判所は「入社前の研修は、自由参加」「会社は参加を強制できない」「参加しない者にペナルティを与えてはならない」と判断しています。そして、内定を取り消した会社に慰謝料79万円の支払いを命じました。

ただし、だからと言って内定者研修をサボりまくってしまうのは、もちろん控えたほうがいいでしょう。ペナルティが課されないからと言って、これからお世話になる先輩社員の心象を悪くしたまま入社式を迎えるメリットはありません。

また、内定前の「内々定」も法律上一定の保護を受ける場合があります。裁判例を1つ紹介します。

その方は内々定もらっていた大学4年生、内定式が10/2に迫っていたのですが、その2日前の9/30に、会社が内々定の取消しを通知してきたのです。内々定をもらえたことで、就職活動をやめ、複数の他社からの内々定も断っていたので、突然の内々定の取消しで窮地に立たされました。

裁判所は会社の対応によって、労働契約が確実に締結されるであろうという学生の期待が、法的保護に値する程度に高まっていたと判断することが相当として内々定の取消しは違法と判断しました。そして慰謝料50万円の支払いを命じました(コーセーアールイー事件:福岡高裁 H23.3.10)

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会社は「経済情勢が悪化しやむなく取り消した」と反論しましたが、裁判所は「経済情勢の悪化は内々定の前から存在していた」として会社の反論を容れませんでした。

内々定段階でも、会社が行ってきた対応次第では、裁判所が「就職活動している方の期待が法的保護に値するレベルにまで高まった」と判断するケースがあります。