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詐欺電話をかける「ハコ」や「ルーム」の実態

首都圏を中心に全国各地で発生した広域連続強盗事件では、フィリピンにかけ子が詰める部屋(彼らはこれを「ハコ」と呼んでいた)が存在し、首謀者らの監視の下で、日本国内に電話をしていました。

首謀者は、かけ子を競わせて、成果を上げるように叱咤激励していたようです。このハコは、フィリピン国内にあったため、報道からは、さほど窮屈さや制約は感じませんでしたが、国内のハコ(一般にはルームと言われる)は、かなり行動に制約を受けるようです。ルームを知る地方の半グレによる証言を紹介します。

裏の仕事については詳しく言えませんけど、オレオレ詐欺では知り合いに声を掛けられて関東に上がったこともあります。でも一週間ぐらいしかいなかった。ルーム(拠点)を抜けるのがすごく大変でしたけど、「(別の)人間を手配する」と噓を言って、どうにか抜けました。

その時のやり方は――電話をかける場所、つまり、マンションの一室が「ルーム」と呼ばれてて、ここはタコ部屋。かけ子はこの部屋から出ることができないようになってます。外出禁止。外に出れば職質に遭う可能性があるし、他の半グレと会う可能性がある。オレオレやっている人は県外から来てる人が多いから、その筋の人間が見たら分かる。たとえば、怒羅権のメンバーなんかと会うと、そりゃ厄介なことになりますからね。

ルームから出るのは、せいぜいコンビニに行く時くらいで、朝の八時から夕方五時までが仕事です。

「オレオレは日をまたぐとダメなんです。本チャンの息子に電話する可能性があるでしょ?」詐欺電話の実態を知る半グレの証言_1
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朝になるとこのルームを仕切っている(関東の)半グレが、名簿を持ってくる。そこに書かれた番号にひたすら架電するだけ。架電する場所はみんなが同じ部屋じゃなくて、一人はリビングで、別の人は居間でという具合で、それぞれ離して配置しています。

その時のルームには3人いましたね。30代くらいのが2人と、40代の古参が1人。この古参だけは、時間になると、どこか知らんけど帰宅していた。

各部屋は壁で仕切られてて、みんな黙々と仕事しているから異様な感じですよ。

稼げる奴と会ったことがありますが、顔が違う気がしますね。(その人は)1クールあたり300万〜400万円。普通、平均は100万〜200万円といったところですから。500万円をシノイだかけ子は20%だから100万円の報酬ですが、ある時そのカネをもらっているところを目の前で見ました。

でもルームに軟禁状態だからカネをもらってもすぐには使えない。それにオレオレでは、2ヵ月くらい何もない(成功しない)なんていうことはザラですからね。

だいたい2ヵ月から3ヵ月したらルームを移動します。大体は別の県に場所を変える。この時は引っ越しがあるので、少しは自由な時間ができる感じです。

8時始業、17時終業というのにはわけがあって、銀行が開いている時間がメイン、午前中が勝負なんです。だって午前中にアポまで行かないと銀行の出金が間に合わない。

そうはいっても、銀行でメクれる(オレオレ詐欺がバレる)こともあります。電話口で、急に母親(被害者)が強気になることがあるんだけど、これは、銀行員に察知された証拠ですわ。

午後の仕事は、翌日の布石。オレオレは日をまたぐとダメなんです。本チャンの息子に電話する可能性があるでしょ? だから、午後は電話して様子を探るだけ。「お母さん、元気にしてる?いま、仕事が忙しいから、なかなか顔を見に行けないけど、来週ぐらいには一度帰るね」とか。これへの反応がよければ(すんなり乗ってくれば)、翌日にオレオレを実行するわけです。