社会的にドロップアウトした人たちの動画をずっと見続けていた

ところが、就職活動でつまずいてしまう。

新聞社、出版社、テレビ局などマスコミばかり片っ端から100社以上にエントリー。高梨さんは昔から夏目漱石が好きで、国語はよくできたのだが……。

「まだ若くて、おバカさんだったから、マスコミに行けるものだと思っていて。全部受けたら、全部落ちちゃって。すごく視野が狭かったから、あのころ、考え方をちょっとでも広げてくれる人に出会えていたら、結果は変わっていたと思いますね。もちろん最後の方は、一般企業など色々受けましたよ。でも、すでに失敗しまくっていて、自信がない。そんなヤツは採用しないですよ。そこで動けなくなりました。もう、エネルギーがなくなっちゃったんです」

大学を卒業後、家にひきこもった高梨さん。ニートに関する本を読みあさり、インターネットでホームレスなど社会的にドロップアウトした人たちの動画をずっと見続けていたそうだ。

性別による区別が厳格な韓国語の中で、男女分け隔てなく使われる済州島の方言「サムチュン」Netflixuドラマ『私たちのブルース』で描かれた、その背後に潜む済州島の死生観とは_2

「自分より苦しんでいる人を見て、自分の方がマシだと思いたかったから?」
 
そう聞くと、高梨さんは真顔で否定する。

「こうはなりたくないというより、将来は彼らみたいになるだろう思っていました。あきらめですね……。人間関係も切れてしまったし」

大学時代の友人はみんな就職している。卒業後、何回かは会ったが、自分だけ働いていないという負い目があり、自分から連絡を取らなくなっていた。