一方的に上海電力が反論する
納得いかない地元議員は、もう一つ問うた。
「工事が始まってから下流にあるこの集落でイノシシが出てきたんです。長年そこに住んでいる方が『こんな近くまでシシ(猪)が下りてきで……、こんなことはぁ初めてだぁ』って言ってました。工事の影響じゃないんですか」
齢(よわい)80という現地の古老が戸惑っていた様子を紹介したが、すかさずこの問いかけにも反論した。合同会社幹部は、首をかしげながら、
「うち(上海電力日本)ではなく、すぐ傍の山(集落に隣接する山)を開発したことが影響していたんじゃないですかぁ」
本社幹部も畳みかけた。
「別の(ソーラー)事業者による開発のせいでしょう」
私は黙って両者の話し合いを聞いていた。
イノシシ出没の原因とする「すぐ傍の山」とは別のソーラー発電所のことである。上海電力日本とは別の企業で、その面積はわずか4ヘクタール。上海電力は620ヘクタールだから、桁けたが二つも違う。
大型野生動物の行動範囲とこれらの開発規模との関連からいうと、一方的に上海電力が反論する内容は無理目のような気がした。
二文字違いの事業者
そんな上海電力日本に対して、住民や行政に不満や懸念がないわけではない。
もう一つ別の現場、西郷村羽太(はぶと)地区のソーラー用地(図1-1)は、陸上自衛隊白河布引山(しらかわぬのひきやま)演習場に近い場所にあるが、最初の事業者「合同会社SJソーラー白河」から2020年3月13日、二文字だけ白シールを貼って修正追加した新事業者「合同会社SJソーラー白河1号」へ譲渡され、県への申請も終わっていた。この譲渡に気付くのは相当難しいだろう。
問題はこの譲渡によって、元々の事業者が地区住民との間で交わしていた説明会での約束事が反故にされてしまったことだ。説明会では元々の事業者が道路を新しく敷設することを約束していたのだが、その後の計画変更のことも、事業者変更のことも住民側には知らされず、放置されていた。
この説明会に出席し、地区住民と一緒になって道路の新敷設の約束を交わしたのが、私と同行してくれた大竹議員で、最初の事業者合同会社SJソーラー白河が開いた説明会の説明役が、今回のガイド役のK氏だったという。K氏は先述したとおり上海電力日本の社員と株式会社P社N合同会社の幹部職の三つも兼務している。