住民側は結局、泣き寝入り

大竹議員は今回の視察が終わり、ワンボックスカーを降車してからも執拗にこの約束事についてK氏に問い糺(ただ)した。

「住民は『説明会で約束していた道路が(譲渡先の業者によって)違うところに付けられている』と言っています。譲渡したから知らないでは済まされないのではないか。譲渡先が説明会をしないのはおかしいのではないですか」

住民側の要望・約束は置きざりで泣き寝入り…上海電力が福島県でメガソーラーをやりたい放題、噛み合わない両者の話し合い_5
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K氏の歯切れは悪く、しどろもどろで言い訳めいて苦しそうだった。

しかし「合同会社SJソーラー白河」と「合同会社SJソーラー白河1号」は別法人なので、結果的に、先の事業者の約束事を新事業者は継承しなかった。

口約束で甘いことを聞かされ、OKを出したら、後で社名を変えられて反故にされてしまったという経緯である。口約束では何の保証にもならない。文書に残したり写真で記録しておかないと忘れ去られてしまう。住民側は結局、泣き寝入りで、行政や住民たちの交渉力が弱いと対抗できないのだ。

監視カメラ、強気の反論、繰り返される事業者の変更、約束事の置き去り……。
グローバル企業は合法的だが簡単ではない。手強いのである。

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『サイレント国土買収 再エネ礼賛の罠』 (角川新書) 
平野秀樹
2023年6月10日
1,056円
296ページ
ISBN:978-4040824352
脱炭素の美名のもと、不可解な用地買収が進み、国土が失われ続けている

(本書で紹介する主な地域)

■メガソーラー
福島県西郷村(上海電力のメガソーラー)、茨城県つくば市(日本最大の営農型ソーラー)、大阪湾咲洲、山口県柳井市・岩国市(岩国基地周辺メガソーラー)、熊本市、長崎県佐世保市

■陸上風力
北海道稚内市、北海道当別町

■洋上風力
富山県入善町(日本初、洋上風力にも中国企業)、長崎県西海市

■港湾
北海道釧路市、北海道石狩市、北海道小樽市・余市町、北海道苫小牧市、大阪市、福岡市・福津市、長崎県佐世保市(ハウステンボスを買収した香港資本)

■リゾート地
北海道千歳市、北海道夕張市、北海道倶知安町・ニセコ町、北海道占冠村・新得町・赤井川村(外資が占有する国有地)、北海道富良野市・上富良野町、新潟県糸魚川市・妙高市・阿賀町(原生自然と鄙びた宿を買う)、神奈川県箱根町・静岡県熱海市(高級旅館と町屋を買う)、歴史ある通りが企業の名を冠した名称に(京都市)、大阪市・泉南市

■農林地
北海道平取町(ドローンの墓場)、茨城県阿見町・土浦市、宮崎県都城市(700ヘクタールの巨大開発)

■離島
山口県周防大島町、長崎県対馬市、鹿児島県奄美市(琉球弧の要衝をあの手この手で)、沖縄県宮古島市、沖縄県北大東村ラサ島(垂涎の孤島)

■産業インフラ(物流団地や工業団地など)
北海道石狩市、埼玉県幸手市、北海道白糠町、熊本市・菊陽町

■学校や文化施設
北海道稚内市・北海道苫小牧市(キャンパスを買う)、岩手県安比町(外資による教育ビジネス)、新潟市・佐渡市(総領事館問題)
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