縁あるふたりの夢の対局
川上量生さんが囲碁を始めたのは30代のころ。自身が経営するドワンゴが上場したときに「君も何か趣味を持ちなさい。ゴルフ・小唄・囲碁のいわゆる”三ゴ”のうち、ふたつを趣味にしなさい」と母親の従兄弟に言われたのがきっかけなんだとか。
小唄(三味線音楽)はやりたくなかったが、碁は『ヒカルの碁』を読んでハマり、ゲームボーイアドバンスで遊んでいたこともあって、藤澤一就八段に長い間指導を受けるほど本格的にのめりこんだという。
今回はそんな川上さんと同じく藤澤一就八段の弟子であり、N校の卒業生という縁を持つ囲碁界の若き天才、上野愛咲美女流立葵杯・女流名人との対局をお届けする。
「私の就位式などに来ていただいてお会いしたことはありましたが、碁を打つのは初めてです」と上野さん。
藤澤八段の見立てで手合いは6子に決まり、さっそく対局開始。
第1譜 迷いなく大模様
川上さんは早打ちです。黒2、4から10と、迷いなく中央志向の骨格を築く。
白11から15となると、一転、黒16と守りも完璧。そして白17に対しては黒18と左下の白全体を攻めた。
これは6子の打ちぶりではない。上野さん、大変な一局になることをこのあたりで認識したに違いない。
「黒20も26もいい手で困りました。黒28と頭を出したのも素晴らしい」と上野さんをうならせる。
そして白33となって、下辺の黒がピンチだと感じた瞬間、パッと黒34とワタった。黒に付け入るスキはない。