仮想空間の”学校”に通う不登校児
テレビゲームを模した画面内の教室に職員と子どものアバター(分身)が入り、この日のテーマであるサンゴの生態について通話やチャット機能を使ってのやりとりが続いた。不登校の小中学生が集まるインターネット上の仮想空間「room-K」での学習風景だ。
仮想空間を利用した不登校の児童生徒への支援として、認定NPO法人「カタリバ」が2021年に始めた。埼玉県戸田市など自治体と協力し、22年11月時点で134人が利用する。
自宅など子どもの安心できる場所からアクセスできるのが特徴で、いくつかに分かれた教室ごとにプログラミング、イラスト、工作など、子どもたちが自分の好きなプログラムを選ぶことができる。
家から出ることが難しかったり、集団でのコミュニケーションが苦手だったり、不登校児が抱える困りごとや置かれている状況はそれぞれ異なる。カタリバでは定期的に支援スタッフが面談して一人ひとりのペースに合った時間割を立てる。
なぜ「秀頼」は学校に絶望し、仮想空間に行ったのか
「秀頼」の名で自宅から参加する小4男児(10) も「room-K」に参加する一人だ。小学校に入学後すぐに不登校になった。
「みんなと同じでないといけない学校が合わなかった」。苦手な科目で分からないことを聞きたくても、自分ひとりで教員に聞くことができなかった。逆に好きな科目で上級学年の内容の質問をすると答えてもらえず、失望感を強めた。
「好きなことに集中できるのが自分の良いところ」とカタリバでは自分なりのペースで好きな理科などを学ぶ。現在は学校に少しずつ通いながら、2日に1回ほど仮想空間で学んでいる。