マニュアルに従って正確に作業する均質な人材
不登校の加速度的な増加は、教室に集まって教員が一斉に教える学校文化に対する子どもたちの異議申し立ての広がりを映し出す。
明治維新から戦後の高度経済成長期に至るまで工業化が社会の課題だった時代はマニュアルに従って正確に作業する均質な人材が必要とされ、学校での画一的な教育が効率的だった。デジタル社会を迎えた今、求められているのはイノベーションを起こせる人材だが、学校の対応は鈍い。
「教科書の内容は全て理解していたが、自分のレベルに合わせた勉強をすることは全く許されなかった。周囲に合わせろと叱られた」「授業で発言をすると雰囲気を壊してしまい申し訳なく感じてしまう。分からないふりをするのが苦痛だった」
文科省の有識者会議が21年に実施したアンケートに悲痛な訴えが並んだ。対象者は3歳で九九を理解するなど特異な才能を持ち、「ギフテッド」とも呼ばれる小中高生やその親など約800人だ。
浮いてしまう「ギフテッド」3割が不登校傾向
有識者会議は22年9月に提言をまとめ、特異な才能を持つ児童生徒への支援策の拡充を求めた。在籍するクラスと別の教室でオンライン教育を受けられるような環境整備も提言に盛り込まれた。
文科省は23年度当初予算案に関連予算8000万円を盛り込み、大学や民間団体に委託して指導プログラムの実証研究を進める。特性を把握しやすくする手法の情報収集や、教員が理解を深めるための研修教材の開発にも着手する。
特異な才能を持つ児童生徒は学校の集団生活に困難を抱えるケースもあり、有識者会議の調査でも対象の小学生らの3割に不登校の傾向があった。才能や特性に応じた環境づくりが急務となっている。