不登校児の4割弱は学校、フリースクールなどともつながっておらず

学校は学力などを伸ばすだけでなく、集団生活を通じて協調性を身につける役割を担う。一方で、16年12月、状況によって児童生徒が学校を「休養」する必要性を明示し、不登校児の学びの充実を図る教育機会確保法が成立した。

新型コロナウイルスの感染拡大もあって「必ずしも学校に行かなくてもよい」という意識が保護者や学校関係者の間で広がった。文科省も登校を基本に据えつつ、従来の画一的な教育から、一人ひとりに合わせた「個別最適な学び」へと転換する目標を掲げる。

だが、学校になじめない子たちの受け皿は貧弱なままだ。日本は家庭で学ぶホームスクーリングヘの支援体制が欧米ほど整っていない。

文科省の調査でも不登校児の4割弱は学校ともフリースクールなどの民聞機関ともつながっておらず、その比率は年々大きくなっている。利用に年100万円ほどかかるフリースクールもある。子どもが不登校になったとき、学びの機会を保障できるかどうかは家庭の経済力に左右されてしまうのが現実だ。

過去最高の24万人! 激増する不登校児…画一的に人材を育てる昭和教育に未だ目をつぶる学校の怠慢「ギフテッドの3割は不登校傾向」_4
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「学びの継続は自己責任になっている現状」

不登校児をオンラインで学習支援する熊本市の遠藤洋路教育長は「現状は学校に無理して来なくてよいといいながら、学びの継続は自己責任になっている。登校するかしないかではなく、色々な場所で学べるようにすることが重要だ」と言い、学校以外の受け皿を教育行政が率先して整える必要性を訴える。

不登校の段階で周囲が適切に対応できず、成人後に長く自宅に引きこもる例もある。「個別最適な学び」を保障しながら社会性をどう育むか。教育行政の本気度が試される。

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『「低学歴国」ニッポン』
日本経済新聞社
2023年5月9日
990円
216ページ
ISBN:978-4296117376
大学教育が普及し、教育水準が高い「教育大国」――そんなニッポン像はもはや幻想?
日本の博士号取得者数は他先進国を大きく下回り、英語力やデジタル競争力の世界ランキングでも年々遅れをとっている。      

とがった能力の子をふるい落とし、平均点の高い優等生ばかり選抜する難関大入試。世界の主流とずれる4月入学。理解が早い子にも遅い子にも苦痛なだけの「履修主義」指導……。

岩盤のように変化を忌避する学校教育はいま、私たちの未来をも危うくしている。   
世界をけん引する人材を輩出するには、「何」を変えればいいのか。教育の今をルポし、わが国が抱える構造的な問題をあぶり出す。

【目次】
はじめに 日本人の「低学歴」化を見つめる
第1章 変わらない日本の「学校」
第2章 いびつな日本の「学歴」問題
第3章 二極化する「入試」、形骸化する「偏差値」
第4章 「学校崩壊」避けるためにできること 
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