弱音を吐けない男の「ジェンダー規範」

私は人々から恋バナを聞き集める活動をしていますが、恋愛にまつわるあれこれを考える上で避けて通れないのが「ジェンダー」の問題です。これは社会的・文化的に形成された男女差を意味しますが、そう聞いてピンと来た人には当たり前すぎる話でしょう。しかし、ジェンダーは「知らない人はまったく知らない」という類の問題でもあります(特に男子!)。

私たちは社会やメディア、あるいは他者から「男とはこういうものだ」「女とはこういうものだ」というメッセージを知らず知らずのうちに受信しています。望む/望まないにかかわらず、期待や役割、理想像やイメージといったものを背負わされているわけです。

たとえば「男の子なんだから泣いちゃダメ」といった言葉や、「女の子が好きな色はピンク」というレッテルなんかがその典型ですね。こういったジェンダー規範を空気のように吸い込みながら暮らしていると、自分自身の中にも「男/女とはかくあるべし」という意識が根深く形成されてしまう。これを「内面化」と言ったりしますが、特に男子校出身者の私は、かなり偏ったジェンダー規範を内面化していたように思います。 

大学で「女子が8割」のクラスになじめなかった僕が、彼女たちとの距離を縮めることに成功した「偶然の自己開示」_3

男は弱音を吐いてはいけない。元カノに未練タラタラの男なんてみっともない。男の恋バナはキモいだけ。自分の失恋くらい笑い話にできなくて何が男だ──。当時の私はこういった意識にバリバリ囚われており、また一方で、女子に対しては無知や妄想がベースになってできあがった偏ったイメージを抱いていました(女の人は足が臭くならないとか、女の人はタバコを吸わないとか、本気で思い込んでました)。

それゆえ、自分から女友だちに悩みを打ち明けるだなんて到底考えられないことだったわけですが、あまりに悲しかったこと、20歳の誕生日にフラれたという切なさ、慣れないクラスメイト相手に会話のネタがなさすぎた……などの要素が合わさった結果、ついぽろっと失恋の話をしてしまった。この自己開示は偶然の産物に過ぎませんが、これがなければ私の大学生活はまったく別の方向に進んでいたかもしれません。