新成人を狙う「後だしマルチ」
4月1日、民法改正に伴い、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられ、18~19歳の約220万人が一斉に成人と見なされることになった。
未成年から成人になることで、スマホやクレジットカードなど様々な契約が親の承諾の必要なく、ひとりできるようになる反面、未成年者取消権が喪失する。未成年者取消権とは、親の同意なく高額な契約を結んでしまった場合に、いつでも契約を取り消せる権利だが、成人になるとこれが使えなくなるのだ。
犯罪心理学が専門で悪質商法などにも詳しい立正大学の西田公昭教授がこう話す。
「取消権があったため、悪徳業者の多くはこれまで対象者が20歳になるのを待ってから勧誘していましたが、4月1日以降は18~19歳の人に対しても、情報商材やマルチ、エステ、美容医療、出会い系サイトなどを利用した、ありとあらゆる悪質商法を持ちかけることができるわけです」
特に「大学1年生は悪徳業者から見れば〝魅力的なカモ〟」と西田教授は言う。
「18~19歳は一般的には高校を卒業し、大学に進学する年齢です。自己責任のもとでの契約に関する経験と知識が圧倒的に不足しているうえに、心理的には、大学受験が終わって期待感ばかりが高まり、慎重さに欠けた思考に陥りやすい時期でもあります」
「また、地方から東京に出てきた学生であれば新生活に不安も抱え、優しく手を差し伸べられるとつい、知らない人にでも頼ってしまいがちです。今回の成人年齢引き下げは、そうしたぜい弱性が非常に高い消費者を一挙に社会へ放出した形で、だます側にとっては〝天国〟といえます」
その勧誘の手口について、西田教授はこう続ける。
「以前はキャンパスでサークル勧誘などを装って声を掛ける手口が主流でしたが、最近の主流はSNSです。大学に進学すると『#春から〇〇大学』などのハッシュタグを付けてツイートし、友だちを作ろうとする新入生が非常に多いのですが、悪徳業者はその輪のなかへ巧妙に入り込んできます。その時点では怪しい人だとは誰も思わない」
「だます側は、最初は警戒されるのでお金の話は持ち出しません。SNSである程度の関係性を構築してから会う約束を取り付け、その後、頃合いを見て投資、マルチ、自己啓発などのセミナーやオンラインサロンに引っ張っていくのが典型的です」
最近は〝後出しマルチ〟と呼ばれる悪徳商法の被害に遭う大学生が急増しているという。これは、情報商材の勧誘とマルチ商法を2段階で仕掛けてくる詐欺的な手口だ。
「FXなどの投資でカネを稼ぐ方法を解説する高額な情報商材の話を持ち掛け、借金をさせて購入させる。解説どおりに実践しても利益が出ることはなく、借金だけが残る。そうやって借金返済に窮する状況に追い込んでおいて、今度は『友人や知人を誘えば紹介料を払うよ』とマルチ商法のネットワークに引き込んでいくのです」(西田教授)