自国の民主主義を踏み潰してまで行われる”国防”

混沌と共に、ミサイル搬入車両は駐屯地へ向けて出発したが、封鎖を免れた市民たちの自動車による牛歩によって、その速度は人間が歩くほどになっていた。私は友人の車両に乗ったり、降りて走ったりを繰り返してミサイル搬入車両を追いかけた。市街地の路面店の店主のミサイル搬入車両を見る驚きに満ちた表情が胸に残っている。

〈緊迫ルポ〉「地球上から消え失せろ!」抗議者を機動隊が排除し、陸上自衛隊石垣駐屯地にミサイルが搬入された一部始終_11
牛歩走行をして規制された住民の車両とその横を通過するミサイル搬入車両
〈緊迫ルポ〉「地球上から消え失せろ!」抗議者を機動隊が排除し、陸上自衛隊石垣駐屯地にミサイルが搬入された一部始終_12
石垣の市街地をミサイル搬入車両が通過していく
〈緊迫ルポ〉「地球上から消え失せろ!」抗議者を機動隊が排除し、陸上自衛隊石垣駐屯地にミサイルが搬入された一部始終_13
ミサイル搬入車両は物々しい警備体制で駐屯地へ向かう
〈緊迫ルポ〉「地球上から消え失せろ!」抗議者を機動隊が排除し、陸上自衛隊石垣駐屯地にミサイルが搬入された一部始終_14
駐屯地に入っていくミサイル搬入車両
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市民たちの牛歩で、ミサイル搬入車両が鈍行している間に、私は駐屯地に先回りした。牛歩に挑んだ人々も次々に規制され、トラックは断続的に駐屯地へ入って行った。この日、15台の車両が搬入され、陸上自衛隊石垣駐屯地にミサイルが配備された。

ミサイルが配備された直後の山里節子さんの言葉は重い。彼女はこれからも反対を続ける意志を示した。沖縄戦、日本軍の強制移住による戦争マラリアや食糧の収奪、そして事実の隠蔽。「軍隊が住民を守らない」それどころか軍隊の間違った運用によって多くの死者を出したこの島の過去に、私たちは今一度、向き合わなければならないはずだ。同じ過ちを二度と繰り返さないために。

なぜこの島に生まれたという、たったそれだけの理由で、この島に暮らす人々は当たり前の生活を望むことが許されないのだろうか? なぜ愛する人や尊敬するおばあ様が涙を流し、機動隊に運ばれる姿を見なくてはいけないのだろうか? なぜ友人や家族、親戚との人間関係を破壊されなければならないのだろうか?

前回触れた与那国島ではすでに自衛隊関係者が人口の15%を占め、選挙も意思表示もままならない状態が作られた中、さらなる基地の拡張が計画されている。なし崩し的に自衛隊と米軍の合同演習も行われた。

この石垣島にも570名の自衛隊が駐屯し、人口の1%を占め、それは市議会のバランスに大きな影響を及ぼすだろう。防衛省と石垣市は有事の際に1千人から2千人規模のシェルター設置を目指すと発表したが、石垣市の人口は5万人、観光客を合わせると約7万人弱とも言われており、このシェルターに入れる2千人と入れない6万8千人を誰が選別するのかにも大きな不安がある。

昨今、この国の民主主義が危機的な状況にあるという声は多く聞かれるが、今の石垣や与那国、そして琉球孤の島々に対する国家の横暴を目の当たりにすると、すでにこの国の民主主義は壊れていると私は感じる。

条例で定められた署名数に達した住民投票はいまだに行われないまま、あろうことか市議会は条例から住民投票の項目を削除した。石垣市住民投票を求める会が起こした「当事者確認訴訟」は結審を終え、5月23日に判決を迎える。

そのような中、4月6日16時頃、陸上自衛隊幹部ら10人が搭乗したUH60JAヘリが宮古島駐屯地(反対運動の中、2019年開局)から離陸し、下地島付近で消息を絶った。9日現在、いまだ乗員の安否や事故原因は不明である。

前述した山里節子さんの日本軍に関するスピーチや、今までの米軍機事故の顛末を踏まえると、今回の事故の情報がどこまで開示されるかは極めて不透明だ。このような不透明な存在と、同じ島共存することを強いられる人々の不安感をわれわれは無視してはならない。

自国の民主主義や人権を踏み潰してまで行われる国防とは一体なんなのだろうか? 今、この国に生きるすべての人々が問われている。

取材・文・撮影/大袈裟太郎

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