「鹿のうんこカレー」「全裸登山」「高田馬場でネズミ狩り」
3人は2022年秋の「ナカタン氷河遠征隊」のメンバーだが、海外遠征の他にどんな活動をしているのだろうか。まずは田口さんの話から。
「コロナ禍の間は国内で面白いテーマがないか探していました。『マヨイガ』(山中に現れる幻の家に関する伝承)を探したり、伊豆諸島の新島の地下要塞について調べたり。あと、これは後輩の主催なんですけど、西表島で『ペリカ』を探しましたね」
ペリカといえば『賭博破戒録カイジ』(福本伸行・著)に出てくる、地下強制労働施設の独自通貨だが、「ペリカを探す」とはどういうことなのだろうか?
その探検に同行した久保田さんによると、こんな活動だったらしい。
「昔、西表島には炭鉱があって、半強制で働かされていた労働者たちがいたんです。そこで独自通貨みたいなものが発行されていたという記録があって、その独自通貨をペリカに例えたんです。
でも炭鉱の入口すら見つからなくて、1週間、熱中症になりながらヘナヘナして終わったって感じです(笑)」
探検と聞くと、未踏峰に挑んだり、前人未到のジャングルを踏破したりといった、フィジカル勝負を思い浮かべる。だが、探検部の論理ではそれらは「どちらかというと冒険的で、山岳部とかの領分になる」と田口さんは説明する。
「探検部のオリジナリティを活せるのは、普通の人が行かないような場所に行って調査をするとか、『フィールド×調査』という領域だと思うんです。
そこでみんなが驚くような発見をしたい。山岳部や科学者の領域では勝てないけど、彼らが『その手があったか、気づかなかった』ってむかついちゃうような奇襲攻撃を仕掛けたいんです」
その奇襲的活動に、「鹿のうんこカレー」「全裸登山」などが挙げられる。どちらも女性部員の企画で、「鹿のうんこカレー」は「表参道の1500円のカレーと同じ味」と評判だったそうだ。
「全裸登山をしたのは東京藝大の部員で、『ありのままの姿じゃないと自然は感じられない』と言ってやったそうです。
人が通らない廃道を選んだらしいんですが、地元の人に見つかって警察がすっ飛んできたとか。エキセントリックで面白い人だったと聞いています」(田口さん)
ここで久保田さんがツッコミを入れる。
「田口さんも相当変ですよ。高田馬場のロータリーで、急にネズミを追いかけ始めたから、なんだこいつ?って思いましたもん」
確かに相当な奇行に思える。しかし、「僕の早稲田生としてのアイデンティティを投影した、れっきとしたサバイバル、探検活動なんです」と田口さんは言う。
「サバイバルという行為は、かなり広い意味を持っていて、オリジナリティを生み出すには土地性に依拠するしかない。
つまり、早稲田生がいつもお酒を飲んで馬鹿騒ぎをしている、高田馬場ロータリーでできるサバイバルがオリジナルだと考えたんです」
わかるような、わからないような……という表情の筆者を前に、田口さんは話を続ける。
「早稲田生が吐いたゲロをネズミが食べるんですよ。で、そのネズミを早稲田生である僕が獲って、その毛皮を着て生きていく。そういう高田馬場で完結する活動というコンセプトがちゃんとあるんです。
それで手づくりの罠とかつくってるんですけど、全然引っかからない。今のところ、ネズミのほうが賢い」