〈久本雅美×喰始〉「ただ裸を見せても、アイデアがないとつまんないじゃないですか」WAHAHA本舗の“下ネタ流儀”の極意。はこちら
久本雅美は芸人ではなく女優!?
――1950年代から70年代にかけて活躍していた女性芸人は、朝ドラ「わろてんか」(NHK)の登場人物のモデルにもなったミスワカナさんをはじめ、ミヤコ蝶々さん、京唄子さん、かしまし娘さんがいらっしゃいます。
喰 僕は小学生のとき、ミヤコ蝶々さんやかしまし娘さんをテレビでリアルタイムに見ていました。かしまし娘さんは別だけど、当時の女性芸人は基本的に「女性を捨てている芸」をやっていましたよね。女性はおしとやかでなければいけないという時代に、下品なことを言ったり、男をたたいたり、怒鳴ったりして笑いをとっていました。夫婦漫才でも、鳳啓助・京唄子や人生幸朗・生恵幸子も女性のほうが強いでしょ。
――80年代に入ると、ビートたけしさんや明石家さんまさんといった『オレたちひょうきん族』(フジテレビ)で活躍したメンバーがお笑い界の中心になります。女性芸人では山田邦子さんが目立っていました。
久本 邦子さんだけが圧倒的にすごくて、あらゆる番組が高視聴率でした。そのころはまだ一介の劇団員ですから、「すごいな~」という感じで見ていましたね。
喰 山田邦子さんは例外だけど、この時代もまだ「女性だけで笑いをとるなんて無理だ」という風潮がありました。だから久本たちは女性だけのネタを作りたくて、女囚漫才というのをやったの。
久本 最初はWAHAHAの全劇団員が「女性だけのネタで20分持たせることができるのか? 失敗したらどうするんだ」って心配していましたよ。でも、バカウケして。楽屋に帰って来て、みんなで泣きました。
その年の雑誌『ぴあ』で「今年いちばん笑ったのはWAHAHA本舗の女囚漫才でした」って書いてくれてる人がいて、めちゃくちゃうれしかったですね。女囚漫才をきっかけに『今夜は最高!』(日本テレビ)に呼ばれて、テレビのレギュラーを初めていただきました。
――80年代後半から『夢で逢えたら』(フジテレビ)で清水ミチコさんや野沢直子さん、『今夜は最高!』で久本さんや柴田理恵さんが活躍するようになり、女性芸人の活躍の場が増え始めた印象です。
喰 関西は漫才の文化があるので、女性だけでお笑いを目指している人がいたんだけど、東京は女性でお笑いをやりたいという人自体が少なかったですよね。
久本 みっちゃん(清水ミチコ)はものまねだし、直ちゃん(野沢直子)はタレント性で笑わしていた感じでしたから。芸人ではないかもしれませんね。
――バラエティタレントというイメージですかね。
久本 そうですね。私も芸人ってよく言われるけど、劇団員ですからね。
喰 久本は女優だもんね。
久本 女優って言ったらどつかれますよ(笑)。