私とシンクロするかのように写真を撮ってくれた一枚

<最新写真集発売・広末涼子独占>「最終的に背中を押してくれたのは、『やればいいじゃん』という家族の言葉でした」_4

ふたたび、『C'est la Vie』のプロジェクト記録を振り返ってみる。

2019年の初期プランとしては、2020年夏頃に知床半島などの壮大な自然の中でのロケ撮影をし、同年の刊行を予定していた。けれど、そのプランは実現しない。2020年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症への対策により、同年4月7日に緊急事態宣言が発出されたからだ。

本格的なコロナ禍の始まりである。

「ステイホーム」が合言葉となり、都道府県を越えて移動することへの自粛が促された。その影響は当然避けられず、ロケでの撮影や出張なども全面的に禁止となっていった。

様々な経験を重ねてトラブルさえも逆手にとってきたスタッフですら、アイデアを絞っても打破できないというはじめての逆境。ロケ撮影ができないならどうしたらいいのか? 打ち合わせは続くが答えが出ない。

それでも、2020年の7月18日から撮影がスタートしたのは、その日が広末涼子さん40歳の誕生日だったからだ。

シックにコーディネイトされた大きな花束を抱えて、花束よりも大きな笑顔の彼女。

『C'est la Vie』のプロローグを彩る幾枚かの笑顔たち。実は、これらの写真は『C'est la Vie』に収めるためではなかった。14歳のデビューから彼女を支えてきたスタッフからの、撮影という名のプレゼントだった。

撮影場所は、浅草のハウススタジオ。40歳の誕生日だからこそ「写真館で撮るような人生の記念日を彩る一枚を」がコンセプトであり、デジタルの時代に、あえて8×10の大型フィルムでの撮影も試みられたのは、こうした狙いのためだった。

「どこにもいけない、なにもできない、それでもなにかをはじめたい」という願いも込められていた。

北海道・知床半島から東京・浅草へ。大自然からハウススタジオへ。撮影場所やプランは変わったし、そもそもその写真は『C'est la Vie』のための一枚ではなかったけれど、家族に背中を押された広末さんは、もう迷わず、真摯にこの写真集と向き合っていく。

「今回の写真集には10代の頃から私をたくさん撮ってくれたメンバーが大集結してくださったので、安心感がすごくありました。でも、安心感があるからって、素敵な写真が撮れました、ページが埋まりました……ってだけで世に出すだなんて、写真集ってそれでいいのかなという思いもあって。

いまの時代は、なんでもスマホで見られますよね? テレビも紙媒体も以前に比べたら遠くなってきた時代に、写真集を出す意味みたいなもの。たぶん、それは私だけじゃなくて、集まってくれたメンバーみんなが新しいことにチャレンジする感覚というか、挑戦感みたいなものは現場でもすごく感じました。

カメラマンの丸谷さんって、アツいんです。写真にかける想いもアツいし、毎回の撮影で絶対になにかを生み出すんだというパッションがとてもある方なんです。

ロケ撮影としては最後になった百合の花の時もそうで、広い空間に白い洋服を着ていたんですけど……なんだろう……私、胸がいっぱいになってしまったんです。

ラストだからかなんなのか、よくわからないんですけど、泣きそうになっちゃって。でも、泣いてはいなかった。涙は見せていない。なのに丸谷さんは、そんな私を察知して、表情だけじゃなくて、心も読み取って、私とシンクロするかのように写真を撮ってくれたんですよ」