ネガティブな評価があったとしても、もう慣れてるでしょ?
写真について振り返ることは、思い出を語ることと同じなのかもしれない。
令和ではなく平成だった頃のこと。当時の日本で一番写真を撮られたであろうショートカットの少女が、革命を起こしていた。
CMに、テレビドラマに、そして写真集に。高知県の大自然で育まれた天真爛漫な少女の笑顔は、ポスターとなって全国津々浦々の中学・高校の部室に貼られ、街角に飾られたポスターは盗まれた。アイドル的な人気を超えた、もはや社会現象とも呼べる熱狂だった。
その少女こそ、広末涼子。
あれから四半世紀がすぎ去った令和のいまのこと。女優であり、3人の子どもの母親であり、40代の女性でもある彼女が写真集をリリースする。タイトルは、『C'est la Vie』。「セラヴィ」と読み、直訳するのなら「これが人生」という意味。
タイトルに込められた想いも気になるが、まず最初に尋ねたかったのは、『C'est la Vie』のプロジェクトがいかにして始まったのかという、その裏側について。
「集英社さんから写真集のオファーをいただいた時は、運命的なものを感じました。というのも、別の出版社さんの方から、ほとんど同じタイミングで『本を出しませんか?』というお話もいただいていて(編集注:宝島社から刊行された『ヒロスエの思考地図 しあわせのかたち』のこと)。
実は、30代後半から40代にかけて、新しいチャレンジをするべきじゃないかという漠然とした予感めいたものがあったんです。30代前半ぐらいまでの私は、世間に訴えたい意見や主張があるわけではなく、お芝居を通した作品をエンターテインメントとして、みなさんに楽しんでもらえればと思っていました。
でも、お芝居とは別の表現や、存在価値みたいなものを自分の中に見出していかなくてはいけない年齢になってきたと感じていて、まさにそのタイミングで2つのオファーをいただいて。だから、運命的なものを感じたんです。
でも、エッセイよりも写真集は勇気がいりました。いや、もちろん本で文章を書くのもまるで裸を見られるような感覚があったんですけど、写真集は……お話をいただけることは光栄だけれども……なにをやるの?って(笑)。
若い時は、歯磨きをしていても何をしていても絵になると思うんです。でも、40代の私はなにができるんだろうと」
写真集の担当編集者が残していた『C'est la Vie』の打ち合わせや撮影の記録を振り返ってみると、2019年にはこのプロジェクトが具体的に立ち上がっている。
20歳の誕生日に発売した写真集『teens 1996-2000』も担当した写真家・丸谷嘉長氏を中心として、デビュー当時から彼女をよく知るスタッフが集まった。だが「広末涼子の活動の原点のひとつである写真の世界で新たな記念碑となる挑戦作を」という熱い合言葉は、被写体の迷いを、なかなか説得できなかった。