木曽路から飛騨路へ。雨が降り止まず、ただただコマを先に進めるのみ

DAY.2(2日目)

前日からかなり気温が下がっていたのだが、持参してきたダウンの寝袋にくるまったら暖かく、気持ちよく眠ることができた。
夜が明けてから車のカーテンを開けて外を見やると、冷たい雨が降っている。
今日は一日中、雨が上がることはないという予報だ。
そういう日は、ひたすら移動するに限る。

国道20号で長野県に入り、茅野市からは国道152号に移って峠道を越えた。
伊那市に入る頃には雨がいよいよ激しくなってきたので、道の駅大芝高原で休憩をとる。
道の駅内のお店で地元産のブドウを2パック買い、窓を打つ雨を見ながら食べた。

土砂降りの車中泊の旅。秋の木曽路から飛騨路をどんなふうに走ったか_7
道の駅で買ったブドウのパック

いくら待っても小降りにならないので、気を取り直してエンジンをかけると、国道361号で西に進路をとった。

権兵衛峠に穿たれた長い一直線のトンネルを抜けると、そこは木曽だった。
「木曽路はすべて山の中」というのは本当で、土砂降りの中、山々を駆け抜けて岐阜県に入った。

土砂降りの車中泊の旅。秋の木曽路から飛騨路をどんなふうに走ったか_8
土砂降りの山を越え、岐阜県へ

木曽路は終わり、これより“飛騨路”だ。
それからどのくらい走っただろうか。気づいたら岐阜県高山市に到着していた。
今回の旅の最初の目的のひとつが高山の町並みを見ることなのだが、この日はもう日が暮れかけていたので、見学は明日に持ち越し。

一旦、高山市市街地を通過して飛騨市に入り、「四十八滝温泉しぶきの湯遊湯館」で入浴した。税込620円なり。
ここのお湯は透明で、さらっとした泉質だった。

土砂降りの車中泊の旅。秋の木曽路から飛騨路をどんなふうに走ったか_9
四十八滝温泉しぶきの湯遊湯館

雨の中、店を探してさらに走り回るのも鬱陶しかったので、昨日に続き、そのまま施設内の食事処で食事をとった。
注文したのは煮カツ定食。
鉄鍋の中の煮カツに、自分でといた生卵をかけて完成させながら食べるスタイルで、非常に美味かった。
山をいくつも越えてきたけど、このあたりにも煮カツ文化は浸透しているのだ。

二日連続で似たようなモノを食うのも、誰にも束縛されない一人旅の醍醐味だよな、などと考える。
家族と一緒の旅だったらおそらく「またトンカツ食べるの!?」「違うのにしなよ」などという妻や娘の非難に似た声に押され、きっと違うモノを注文するだろう。
ああ、自由っていいな(実に小さな自由だ)。

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二夜連続の“煮カツ”メシ

天気の悪い日はほかに行くところもないので、食後も施設内でゆっくりさせてもらった。
入浴客用の休憩室で少し仕事をしたり読書をしたり。マッサージも受け、なかなか充実したひと時を過ごした。

それにしても今日は、道々にフォトジェニックな場所がいくつもあり、本来であれば車を止めて立ち寄りたいところだった。
だが、土砂降りの雨のため降りる気になれず、そのまま通過してしまったことが心残りだった。
お天道様のご機嫌次第なのでこればかりは仕方がないのだが。

夜も更けた頃、岐阜県・飛騨市の道の駅アルプ飛騨古川に到着。
天気回復を祈りつつ、朝まで休憩・仮眠をとった。


ところで僕は今回の旅に、お供として一台のクラシックカメラを持ってきていた。
MAMIYA C33という1965年製の中判フィルムカメラだ。

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MAMIYA C33。出番はいつになる?

これで撮った写真の美しさをぜひ見てもらいたいと思っているのだが、ここまでで出番は一度もなし。

だってこのカメラ、昨今のフィルム代や現像代の高騰により、一度シャッターを切ると大体、牛丼の並一杯分くらいの金額が吹っ飛ぶのだ。
僕はそんなカメラのシャッターをバシバシ切れるような貴族ではないので、日が暮れかけた夕方から出発した初日、そして終日土砂降りだった二日目はまったく出す気にもならなかった。
完全マニュアルで露出もシャッタースピードも自分で決めなければならないこのカメラ、条件が悪いと、ほぼ間違いなく失敗写真になるからだ。
牛丼並一杯がつゆと消えるのである。

さて、3日目からは出番があるのか。
乞うご期待。

画像・文/佐藤誠二朗