進む方角さえ決めずに出発。
まず向かったのは山の家からほど近い「ハードオフ」

DAY.1(1日目)

午前中は東京・世田谷区の家で仕事をしていた。
出発予定日なのだが、車中泊用の車は手元にない。
僕は普段暮らしている東京・世田谷区の家のほかに、山梨県・山中湖村の“山の家”で過ごすことも多いデュアラー(二拠点生活者)で、車中泊用のエブリイは山の家の方に置いてあるのだ。
午後にはバスで山中湖に向かう予定だったが、妻が山の家へ行く用事があるということだったので、車で送ってもらうことにした。

山の家では15時から某出版社とのズーム会議。
それを済ませたあと、いよいよMy車中泊カー・スズキエブリイで出発した。

土砂降りの車中泊の旅。秋の木曽路から飛騨路をどんなふうに走ったか_2
出発直後、雄ジカに遭遇。ツノのある雄に会うのは珍しい

この時点でまだ行き先も目的も何も決めていないのだから、行き当たりばったりも甚だしい。
「どこに行こうか」とぼんやり考えながら、とりあえず河口湖方面に向かった。
河口湖町の国道139号沿いにある「ハードオフ」で、前からこの車に装備したいと思っていた機器を探そうと考えたのだ。
それはすぐに見つかった。
ケンウッドの型落ち中古ドライブレコーダー(本体のみ3800円なり)である。

土砂降りの車中泊の旅。秋の木曽路から飛騨路をどんなふうに走ったか_3
購入してすぐにセットしたドラレコ

もちろん、万が一の事故やあおり運転に遭ったときの備えという意味が第一だが、それ以外にも、前の車中泊旅でドラレコの必要性を強く感じた一件があったのだ。

ほかの車にまったく出会わない夜中、下北半島の寂しい国道を一人ひた走っていたときのことだ。
カーブを曲がった先の道の真ん中に、どっかと座り込んでいるクマと目があった。
一瞬呆気にとられたのち、慌ててスマホのカメラを構えたがときすでに遅く、クマは道の脇の茂みに入り、姿を消していた。
ドラレコさえあれば、千載一遇のクマ事件をちゃんと記録できていたのに……。
その件が悔やむに悔やまれず、ドラレコを装備することにしたのだ。

そして「ハードオフ」の駐車場で、改めて行先を真剣に考えた。
5泊6日は、一般道をトロトロと走る僕の旅スタイルでは、決して長い予定ではない。
しかも初日である今日は、東京から山の家までの移動や仕事、それに自力によるドライブレコーダー設置などのせいで、もう日が暮れかけており、実質、明日からの5日間しかない。
だから無理して遠くへ行くことは考えず、近県をじっくり攻めようと考えた。