1970年代から彼女の主演作を見続けてきて思うこと

78歳のカトリーヌ・ドヌーヴ。65年のキャリアを経てなお輝く、驚異的な美しさをプレイバック_5
『リスボン特急』(1972)
Album/アフロ

筆者は1970年代から、ずっと彼女の主な主演作をリアルタイムで見続けてきているが、最初に映画館で見たのは1972年の『リスボン特急』だった。そのとき彼女は28歳だったはずで、まだこちらが子どもだったこともあるが、きれいなお姉さんという印象だった。その後も、その時代時代の彼女を見るたびに、同じように思ってきた。たとえば1980年の『終電車』や1992年の『インドシナ』のときも、「いつだって美しさをキープしていてスゴイな」と思ったものだ。

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『インドシナ』(1992)
AFLO

一度だけ、1997年に来日した彼女に会ったことがある。そのときは、たぶんダニエル・オートゥイユと共演した『夜の子供たち』(1996)の公開に合わせての来日だったと思う。記者会見と、フランス大使館でのパーティで間近に接した。

記者会見で「いつまでもお美しい秘訣は何なのでしょうか?」と聞かれた彼女は、次のように即答した。

「答えはふたつあります。ひとつは、お水をたくさん飲むことです。私はいつでもミネラルウォーターをたくさん飲んでいます。もうひとつは、常にだれかに恋をしていることですね」

もちろん、この答えに会場はわっとどよめいた。すると、その反応を見越したように、彼女はこう続けた「私が今、恋している男性が誰なのか教えてあげましょう。それは私の孫です(笑)」

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『夜の子供たち』(1996)
AFLO

映画監督ロジェ・ヴァディムとの間にもうけた息子クリスチャン・ヴァディム、イタリア人俳優マルチェロ・マストロヤンニとの間にもうけた娘キアラ・マストロヤンニにはそれぞれ子どもがいるため、プライベートではドヌーヴも孫がいるおばあちゃん。この茶目っ気たっぷりの答えには、本当に大女優の風格というか、余裕が感じられた。

78歳の今も第一線で活躍できているのは、単にその美しさだけでなく、当意即妙なやりとりができる頭の良さとセンスも関係しているはずだ。

現在は『La Tortue』(2023)を撮影中で、アンドレア・ライズボローやモーガン・セイラーと共演する『Funny Birds』が撮影待機中。10月22日に79歳の誕生日を迎えるが、精力的に作品に出演し続ける彼女の伝説は、まだこれからも続きそうだ。

文/谷川建司

『愛する人に伝える言葉』(2021)De son vivant 上映時間:2時間2分/フランス

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バンジャマン(ブノワ・マジメル)は膵臓がんを宣告され、母のクリスタル(カトリーヌ・ドヌーヴ)とともに、名医として知られるドクター・エデを訪れる。彼に一縷の希望を託す母子だったが、ステージ4の膵臓がんは治せないと率直に告げられる。ショックのあまり自暴自棄になるバンジャマン。一方、母親のクリスタルは、息子が「不当な病」になったのは、自分のせいではないかという罪悪感に駆られる。

10 月 7 日(金) 新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座 他、全国ロードショー
配給:ハーク/TMC/SDP
© Photo 2021 : Laurent CHAMPOUSSIN - LES FILMS DU KIOSQUE

公式サイト
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