年齢に応じた女性の魅力を演じるヨーロッパ女優
女性の年齢のことをとやかく言うのは失礼ではあるが、78歳のドヌーヴのこの美しさはやはり驚異的。彼女は10代で映画デビューし、1960年代から第一線で活躍してきた。1972年創刊の「ロードショー」の表紙を飾ったのはドヌーヴなのだが、その彼女が今日もなお第一線にいるのは改めてスゴイのひと言に尽きる。
概して、ヨーロッパの女優たちは『愛、アムール』(2012)のエマニュエル・リヴァや『さざなみ』(2015)のシャーロット・ランプリング、『男と女 人生最良の日々』(2019)のアヌーク・エーメの例を挙げるまでもなく、中年になり、老齢になってもなお、その年代をナチュラルに体現した女性として映画に出続ける人が多く、それはヨーロッパ映画界や観客がそれを当然と考えているからに思える。つまりは、大人の観客がいるということ。一方、若さ至上主義の傾向があるハリウッドでは、女優たちのキャリアの命は短く、35歳ともなるとほぼ役はなくなると言っていい。
ドヌーヴのスゴイところは、ハリウッド的な整形美人ではなく、ほぼ素のままで美しさを保っている点。もちろん、『昼顔』(1967)などに出演していた20代の頃よりはややふっくらとし、(失礼ながら)おなかのお肉もついているような印象はあるものの、ハリウッドの女優たちにしばしば見られるような大幅な経年劣化は起こさず、その反動としてのサイボーグのような人工的な若さでもなく、年齢に見合った美しさの中でトップを保っているところが肝なのだ。