政治参加しないと何も変わらない

みっつんさんが翻訳した『RESPECT 男の子が知っておきたいセックスのすべて』の表紙や日本語版タイトルは、編集者と何度も話し合って決めたもの。全裸の男の子が、鏡に向かって立つ後ろ姿が描かれ、はっきりと“セックス”という言葉がタイトルに入っている。

「『内容はいいけれど表紙やタイトルが手に取りにくい』という感想をいただきました。帯で下半身を隠すパターンも考えたのですが、仕掛けとしておもしろくても、隠せば隠すほどタブー感が増して、“いやらしい話”のままになってしまうと思うんです。これだけ大切な話をしているのだから、恥ずかしいことではないと堂々と伝えたい。


たった一度のセックスで成功や失敗が決まるわけじゃありませんが、たくさん考えたり経験したり、正しい知識を身につけることで、自分と他人を傷つけないようにできる。その方法をこの本は教えてくれるはずです」

本書では、セックスに限らず、ジェンダー・アイデンティティを考えるパートや、女の子とのセックス/男の子とのセックスという両方のパートを設けて、多様な性のあり方を肯定する。著者のインティ・シャベス・ペレス氏はスウェーデンの性教育者としてテレビなどでも活躍。法制度の改定に伴い、改訂版を出すなど時代の変化にも対応している。

こうした一冊がスウェーデンから届いたことを喜びながら、まだまだたくさんの課題が残る日本において、みっつんさんは「政治参加」の重要性を最後に話してくれた。

「スウェーデンは1970年代からジェンダーやLGBTQ+の権利をめぐる運動があり、フェミニズムと共闘してその問題意識を広めたことで意識が高まりました。日本でも運動や考える機会が度々ありますが、政治参加というのは社会が変わる一つの大きなきっかけです。

たとえば日本でも若い世代は8-9割が同性婚に賛成しているそうですが、その若者世代の投票率が30%では結局意見が通りませんよね。そうなると、票にならない若者の意見なんて政治家は聞かなくなるのですから。


しかし、国会は過半数を取った方が全部勝手に決めていい場所ではなく、さまざまな意見を持った国民の代表が議論する場所。オバマ大統領が就任演説時に、支持者以外の声も聞いていきたいと言ったように、大多数の意見と自分の意見が違っても、それは決して小さくも弱くもないと気づいて投票に行って欲しいんです。

議員も含め、お互いに傾聴できると社会がもっと豊かになりますよね。そのために自分にできることを少しずつでもやっていくと、また社会が前進するのではないかと思います」

取材・文/羽佐田瑶子 インタビュー撮影/高木陽春

前編「同性パートナーとの結婚、代理母出産…「ふたりぱぱ」の子育て事情」はこちらから

『RESPECT 男の子が知っておきたいセックスのすべて』(現代書館)
インティ・シャベス・ペレス (著), 重見大介 (監修), ボブa.k.aえんちゃん (イラスト), みっつん (翻訳)
自分と相手をリスペクトすることがセックスの肝。スウェーデンの性教育から学ぶ_6
2021年12月10日
1980円(税込)
単行本(ソフトカバー) 240ページ
ISBN:978-4-7684-5911-9
amazon