子ども相手でも対話が一番

小学校から高等学校(特別支援校を含む)、成人教育まで性教育が必須分野であるスウェーデンでは、さらなる関心の高まりやネットの普及をかんがみて、それまでは「セックス・共生(sex och samlevnad)」と呼ばれていた分野の学習指導要領が、「性のありよう、性的同意と人間関係(sexualitet, samtycke och relationer)」にするという政府が方針を打ち立てたという。性的同意の文化を構築し、セクハラ文化を当たり前にしない姿勢があらわれ、時代に即した変化が感じられる。

「幼稚園教諭をしている友人がいるのですが、最近では中性名詞を使用することも増えてきたと聞きます。英語ではHe / Sheの代わりにTheyを使うように、スウェーデン語ではhan / honの代わりに男性にも女性にも使える名詞として『hen』が用いられています。2012年ごろから普及している言葉で、ある幼稚園を取材したテレビ番組を見ていたら、子どもから『henと呼んでほしい』と求めていました。

大人は選択肢こそ与えどもすべてを決めるのではなく、子どもにもあらゆる選択権がある。女の子として生まれてきたけれど、何となく違和感があって、「こう呼ばれたい」と思うことって子どもの頃からありますよね。そうした違和感を否定しないで、心地のいい呼び名をアドバイスしたり、リクエストに応えられたりする環境が整っていることは素晴らしいと思いました」

子どもの意思を確認すること。それは、みっつんさん自身が大切にしている性教育のベースだという。

自分と相手をリスペクトすることがセックスの肝。スウェーデンの性教育から学ぶ_3

「本人が心地よく生きられる状態を大切にするためには、子ども相手でも対話が一番。幼稚園教諭をしている友人に『性教育ってどうしたらいいのかな?』と相談したら、『教えようとしなくていい』とアドバイスをもらったことがありました。

大人が子どもに教えるという構造が当たり前じゃないですか。でも大人同士なら同じ土俵に立って、1人の人間として対峙して相手の気持ちや考えを聞くことから始めますよね。でも子どもにはそうしてなかったと気づき、ハッとしました。

面倒だし、時間はかかるけれど、一方的に知識を押し付けても子どもは関心を持たないと思うんですよね。息子くんが自分の出生のルーツに興味を持ってくれたことがきっかけで代理母出産について話したように、子どもが関心を持ったタイミングを“チャンス”だと思って話す。先ほどお話しした新しい学習指導要領の中にも、子ども個人の必要に応じて教える、と書かれています。すべての子どもが同じ歳だからと言って同じ興味や悩みを持つわけではないですからね。


わからないことがあれば、一緒に考えたり調べたりすればいいとわかってから、なるべく子どもの話を聞くようにしています。忙しいと子どもに構えないこともあるけれど、話を聞こうとする大人の姿を見て、子どもも同じように成長すると思っています」