怪奇現象が発生し、小学生に戻って盛り上がる50代男子3人女子1人。しかし……
こんなことで嘘をついてもしょうがないし、誓って言うが、この写真は“撮って出し”。つまり色や明るさの調整を含む加工はいっさい施していないものだ。
撮影日は7月10日で、もちろん木々はまったく紅葉などしていない季節。
そしてカメラのレンズを向けた場所は薄暗がりで、肉眼では石碑に刻まれた字を読むのも困難だった。
まるで石碑から噴き出す血のようにも見える、この赤いものは何なのだろうか……。
僕がiPhoneのディスプレイでこの写真を見せると、3人の同級生たちは一様に叫び声を上げた。
「怖い怖い怖い」
「何これ? 赤いのなんてなかったよね!」
「こんなことってある!?」
みんなの気分は間違いなく、小学生時代に戻っていた。
アイドル・チノさんに至っては、写真を拡大して「ねえ、ココに顔がない!?」とまで言い出すではないか。
「ああ、あるねえ。……ヒッ。これ、ネコじゃない?」
と僕が言うと、うわあーネコだネコだとまた騒ぎ出す、50代の男子3人女子1人。
結局、車内はギャーギャーヤバイヤバイと異様なテンションで盛り上がったまま、解散場所である東久留米市の駐車場にたどり着いた。
しかし皆の荷物をおろしているとき、車の左サイドを一瞥した冷静沈着なほっさんが、得意のゴルフでパーを決める時のような表情で後部を指差し、こう言った。
「まあ、多分これだよね」
ちなみに、みんなで乗っていたこの車は、帰りの運転をほっさんとなんチンに委ねていたものの、実は僕の車。
だから、サイドに張り出す形のブレーキランプが付いていることは分かっていて、皆がワーワー言っている途中から僕は、(あ。ブレーキランプの映り込みだな)と気づいていたのだ。
写真を撮ったiPhoneの内蔵カメラには“ナイトモード”と言う便利な機能が搭載されていて、光量が少ない場合は自動的に作動することになっている。
ナイトモードは一度のシャッターで複数枚の写真を撮影し、自動的に処理して最終的な1枚の画像を生成する仕組み。
つまり、その場ではわからなかったブレーキランプの光をカメラが拾っていて、それが写真に反映されたと推測できるのだ。
タネがわかってしまえば、なーんだという話なのだが、小学生時代の肝試しノリがとても楽しかった僕は、皆にこう言った。
「いや、まだネコの謎が解けていない。みんな、帰り道には気をつけよう……」