ローリング・ストーンズデビュー前夜
その汚れた薄暗い部屋に暖房はなく、電灯は一つだけであとはローソクの明かりで暮らしていた。皮肉なことに食料や食器を入れる棚だけはたっぷりあったが、いつも食べ物が不足していた。
電気の配線はむき出しになっていた。壁紙は剥がれていたし、家具も壊れていた。汚れた皿が積み重なり、あちらこちらに空きビンが並び、音楽雑誌やレコードが床に無造作に置いてある……。
そこは1962年から1963年にかけて、ローリング・ストーンズとしてデビューする前のブライアン・ジョーンズとキース・リチャーズが共同生活し、いつもミック・ジャガーが通っていた部屋。
彼らは隙間風が入るその埃だらけのアパートの部屋に集まって、ギターを抱えてアメリカから仕入れたブルースやR&Bのレコードを聴いて、ひたすら研究と練習を重ねた。
ブライアンとキースは、日に一度はどこかのパーティーに押しかけて、失敬してきたビール瓶を3ペンスで売り、近くのスーパーマーケットからジャガイモや卵をくすねる計画を立てていた。
時々、キースの母が心配してやって来て、少なくとも食器棚などにたまっていた埃の層だけはとり除いてくれたという。
「あの子たちはこういったんですよ。“お茶をどうぞ”って。そしてお茶を探すんです。それからコップを見つけるまで大騒ぎなんです。いつもひびの入った古いコップでした」
ブライアンが切り出したバンドをつくる話は、そんな状況でもその部屋でどんどん進行していった。それはいかにしてブルーズとR&Bを広めていくかということだった。














