ロシア軍参謀総長に「水増し報告」疑惑

「コスチャンチニフカを解放した」と、プーチンは誇らしげに語った。その隣にいたのがゲラシモフだ。

ワレリー・ゲラシモフ、ロシア軍参謀総長。プーチンの下で軍全体の作戦を統括する、ロシア軍幹部の中心人物である。ウクライナ侵攻の実務指揮を担ってきたのもこの男だ。

ロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長
ロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長
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そのゲラシモフが、6月だけで29の集落、636平方キロを制圧したと胸を張った。だが検証機関ISWが実際に確認できた数字は、20の集落、約30.42平方キロである。20倍以上の水増しだ。

ここで、その検証機関ISWとは何者なのかを、はっきりさせておく必要があろう。

ISWは2007年、軍事史家のキンバリー・ケーガン氏がワシントンD.C.で設立した組織だ。イラク戦争の停滞期に、独立した立場から現地の軍事作戦を分析する目的で発足した。

2014年のクリミア併合以降はロシア・ウクライナ情勢の分析を専門領域のひとつに据え、2022年の全面侵攻開始からは連日「ロシア攻勢作戦評価」を発表し続けている。

その分析手法は、SNS上に投稿される位置特定映像、ロシア側・ウクライナ側双方の軍関係者やミルブロガーの発信、日々更新される前線地図を照合するという地道な積み上げ型のものだ。

その評価には確信度を明示し、誤りが判明した場合には訂正を行い、根拠となる出典を脚注で示すという透明性を重視した運営がなされている。

米議会の公聴会でもその分析が証言として引用されてきた実績があり、軍や政策担当者からも実務上の情報源として活用されてきた。

ISW自身、現地に赴いて独自の検証を行う研究者を抱え、根拠のある正確な情報の提供を組織の使命として掲げている。

もちろんISWには留意すべき点もある。

資金の一部は防衛関連企業からの提供を受けており、対外政策的にはタカ派・介入主義的な立場に立つ組織だと評されることが多い。