転がり始めたローリング・ストーンズ

金がなくて危機を感じていたという事実を別にすれば、彼らは金儲けを考えたりはしていなかった。3人が問題にしていたのはいつだって、自分たちが信じている音楽のことだけだった。そして無為に時を過ごすにつれて、髪の毛は伸びてボサボサになっていった。

「ミックは、ぼくたちが信じていることをやっていかなければだめだ、というんだ。そして我々は自分たちがベストを尽くせば、あとになって後悔することはないだろうと思っていた」(ブライアン・ジョーンズ)

ミックは自宅からロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに通う学生だったが、その奨学金で家賃などをある程度まで支えていたという。しかし、彼らのブルーズやR&Bへの熱狂は、ファンを獲得することにまではつながらなかった。

プロモーターやクラブ経営者にあてて売り込みの手紙をせっせと書いたが、それもうまくいかなかった。そんな状態が半年以上続いた。

それでも1962年7月12日、記念すべき最初のギグがマーキー・クラブで行われて、ローリング・ストーンズが転がり始めた。

次第にブライアンとキースは完璧な協力関係を築き上げて、それまで誰もやったことがない独特のアンサンブルによるギターサウンドを作り上げていた。ボロアパートでの研究と練習が遂に実ったのだ。

ロンドンのチェルシー地区イーディス・グローブにあった汚れた部屋は、こうしてストーンズ発祥の“聖地”となった。

写真/Shutterstock
写真/Shutterstock